第9話
アズミは女性陣に向かってこう言った。
「ナズミ以外の人達はそれぞれ今まで通り内偵を続けて頂戴。何か動きがあったらすぐ私に知らせること。男爵家を見張っている人達は特にね。分かった?」
「「 Yes,Ma'am! 」」「はい! お姉様!」
「よろしい。では解散」
「ちょっと待ってくれ!」
場を締めようとしたアズミをハインツが遮る。
「なんでしょうか!?」
「僕達にも手伝わせてくれ! このままじゃ僕達の気が済まない! 迂闊にも魅了されてしまったのは僕達の浅慮が招いたことだ。それは否定しないし申し訳ないと思っている。だからこそ名誉挽回する機会を与えて貰えないだろうか? きっと役に立つはずだ! 頼むよ!」
ハインツが頭を下げると同時に、男性陣が全員頭を下げた。だが...
「ダメです。許可できません」
アズミはにべもなくそう断じた。
「な、なせだ!? もう魅了は解けたんだし、何か手伝わせてくれても...」
ハインツが縋るように言い募る。それでもアズミは首を縦に振らない。
「あなた方は信用できません。また魅了される可能性もありますし、そもそもまだ完全に魅了が解けたかどうかハッキリ分かりません。しばらく経過を見る必要があると思っています」
「......」
そう言われてしまえば男性陣は何も言えなくなってしまった。
「それにこの件に関しては、既に私達の両親から国王陛下にご報告申し上げております」
その言葉にハインツは愕然としてしまった。
「父上に...それじゃあこの一件に関して何も知らなかったのは...」
「はい、殿下達だけということになりますね」
自分達だけが蚊帳の外だったと知らされた男性陣は、揃ってガックリと項垂れてしまった。
「まぁ、敢えて知らせなかったんですがね。魅了されてるあなた方に知らせても信じなかったでしょうし、私達が内偵を進めていることを敵に知らされたりしたら困りますから」
男性陣はもう言葉もなかった。
「あなた達に出来ることはたった一つ。何も知らないフリをして普通に過ごす。これだけです。決してあの女に気取られないよう、あからさまに態度を変えたりはしないで下さいね。その上で先程私が挙げた注意事項を守ってくれればそれだけでいいです。忘れないように書いておきますね」
そう言ってアズミはホワイトボードに先程の注意事項を列挙して行った。書き終わった後に印刷ボタンを押す。
「はい、この紙をそれぞれコピーして持って忘れないようにして下さいね」
代表して受け取ったハインツは神妙に頷いた。
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