第8話
「ん~? どうかしましたか~?」
「い、いや別に...そ、それで策とは?」
ハインツは、おもいっきり突っ込んでしまった恥ずかしさを隠すようにナズミを促す。
「はい、実はですね、ホヘット嬢は男爵の婚外子と言われていましたが、どうやらそうじゃない可能性が浮上して来たんです」
「というと?」
「ホヘット嬢が婚外子として男爵家に引き取られたちょうど同じ頃、身元不明の若い女が死体で発見されているんですよね。私はその女が本当のホヘット嬢なんじゃないかと睨んでいます」
「入れ替わったということか? でもなんでまた?」
「ここからは推察になるんですが、本物のホヘット嬢は男爵の言う通りに動くことを拒絶したんじゃないでしょうか? だから邪魔になって始末した。そして見た目が似ている女をどこかから連れて来て婚外子だと偽った。こんな所なんじゃないかなと思ってます。男爵にしてみれば元々使い捨ての駒でしょうから、自分の娘だろうが赤の他人だろうがどっちでも良かったんではないかと推察します」
胸が悪くなるような話を聞かされたハインツは、本当に気分が悪くなって俯いてしまった。
「...それを証明出来そう?」
アズミが静かに問い掛ける。
「はい、DNA鑑定に掛ければ」
そう言ってナズミは、先程ホヘットが口を付けた紅茶のカップをビニール袋に入れた。
「お願いね。それで赤の他人と証明できた場合どうなるの?」
「赤の他人を婚外子と偽って認知した。これって貴族法違反になりません?」
「確かに。血統を重視する貴族社会において、全く血の繋がりの無い者を自分の子だと偽るのは罪に問われそうね。養子縁組とは明らかに異なるもんね。殿下、これで家宅捜索の令状は出せそうですか?」
アズミに問われたハインツはしばし黙考した後、
「...ちょっと弱いな...家宅捜索までは無理だと思う...」
「やっぱりそうですか...ヘタすりゃ警戒されて証拠隠滅のためにあの女を始末されてしまう危険性もありますよね...まぁでも保険としてDNA鑑定は進めて頂戴。ナズミ、どれくらいで結果は出そう?」
アズミに問われたナズミはこちらもしばし黙考した後、
「...そうですね...急いでやらせても二週間くらいは掛かると思います」
「そう。分かったわ」
アズミは頷いた後、全員に向き直って、
「皆さん、今までの私達にはこういった話し合いの場がありませんでした。だからお互いに分かりあえることも出来なかったんだと思います。これからは頻繁にこのような場を設けて、相互理解に努めるようにしましょう。次の話し合いは二週間後、私から連絡を入れます。よろしいですね?」
全員が大きく頷いた。
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