第7話

「そのことに関して説明するためにはまず、あの女の行動原理から説明する必要があります。当初私達は、あの女は見境い無しに高位貴族の子息をタラし込んでいるんだとばかり思っていましたが、どうやら違ったようなんです」


「というと?」


 ハインツが続きを促す。


「そこには法則性があったんです。例えば最初にあの女が粉を掛けた某伯爵子息のご実家には、領地に鉄鉱石を産出する鉱山があるんです。次にタラし込んだ某侯爵子息のご実家には、領地に硝石を産出する山を持っています。この二つから何を連想されますか?」


 問われたハインツは少し考える。


「鉄に硝石...ハッ! 銃火器か!?」


「ご明答。あの女の実家の男爵家では、銃火器を密造、密輸している疑いがあります。それぞれモノにした子息のご実家から便宜を図って貰い、入手した材料を使い密かに作って隣国に流しているんですよ」


 場が静まり返った。


「...まだ材料を入手しているの?」


 静寂を破ってアズミが質問する。


「いえ、現在は取り引きしてないようです」


「既に必要量を作り終えたってことね...」


 アズミが噛み締めるように言った。


「...なんてことだ...これだけでも国家反逆罪レベルの犯罪じゃないか...」


 ハインツは頭を抱えた。


「殿下、まだ続きがありますわよ。次はタズミ!」


「はいっ! お姉様!」


 まだあるのか...そして今度は軍隊調じゃないんだ...だがまた違う属性のようだな...そう思ったが突っ込んだら負けのような気がしてハインツは黙っていた。


「殿下達が口にされた薬物ですが、あれは栽培も販売も禁止されている違法植物です。あの女の実家である男爵家の敷地内にて栽培されているものと思われるます」


「な、なんだって!? そんな植物をどうやって!?」


 ハインツが目を丸くした。


「隣国からです。それを栽培して精製して薬物にして高位貴族の子息をタラし込む。そうして手に入れた材料を使って銃火器を密造する。かなり前から周到に練られた計画のようです」


「そうだったのか...」


 ハインツはなんだか怖くなった。


「あの女の実家は男爵家とは思えないほど裕福で、広大な敷地を有しています。銃火器の密造所や違法植物の栽培所などをその敷地内に隠していると思われますが、狡猾に立ち回っていて中々証拠を掴めません。家宅捜索が出来れば一発だと思うんですが...」


「それに関しては何か策があるのよね? ナズミ?」


 アズミが問い掛ける。


「は~い♪」


「いや普通かよ!」


 思わず突っ込んでしまったハインツであった。

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