第28話

「今度の聖誕祭の日にオンナダイスキーを召喚して下さい。間違いなくチリーヌ王女が現れると思いますので」 


 聖誕祭とは聖人と呼ばれた教会の創始者、聖バウロの聖誕を祝う祭典のことである。


「いいの!? 教会にとって一番大事な儀式の日でしょ!? オンナダイスキーが迷惑を掛けるかも知れないわよ!?」


「大丈夫ですよ。そこは上手くやります。それにご存知でしょ? その日はカップルにとって記念すべき特別な夜になることが多いって」


「あぁ、確かに。その日って毎年、ホテルやレストランの予約が一杯になるって聞くわね」


「えぇ、だからオンナダイスキーにはチリーヌ王女にたっぷりと愛を語って貰って、ついでにお持ち帰りして貰って特別な夜にして貰いましょう」


 そう言ってナズミは怪しく笑った。


 ナズミ以外の全員が引き攣ったような顔をした。



◇◇◇



 そして聖誕祭当日。


 アズミ達は心配になって物陰からコッソリ見守ることにした。やがて厳かな雰囲気の中、聖誕祭が幕を開けた。


 儀式の最中、ワインツは大司教の息子として教会幹部達と一緒に居た。やがて大司教の挨拶が終わり、祭壇に飾られた無数の蝋燭に火が灯され、讃美歌の合唱が始まる。


 それが終わると来賓の人達がそれぞれ祭壇に向かって祈りを捧げる。その中にはもちろんチリーヌ王女の姿もある。


 祈りが終わると最後にもう一度大司教が挨拶をして締めくくる。その後は立食形式のパーティーとなる。


 ワインツは当然、ナズミを伴って現れた。そこへチリーヌ王女がやって来る。


「あらあらあらあらっ! まぁまぁまぁまぁっ! ワインツ様! 素晴らしい式典でございまたわねぇ! 私、感動してしまいましたわ! 是非ともこの後ご一緒に語り合いたいですわ! ホテルを予約しておりますのよ! ホテルのラウンジてご一緒に一杯如何かしら?」


 と、ここまでも前回と一緒。だがしかし、


「オンナダイスキー来い!」


「えっ!? えっ!?」


「聖誕祭おめでとう♪」


 バラを咥えてオンナダイスキー来ちゃった!


「またまたあなたですの!?」


「さぁさぁ~♪ 愛しい君♪ 僕と一緒に天国に行こう~♪」


 ナズミはすかさずオンナダイスキーにチャリンと音がするホテルのキーを渡した。もちろん部屋はスイートである。


「あ~れ~!」


 チリーヌ王女は今夜、大人の階段を登っちゃうかも知れない。きゃあああ~♪ 恥ずかしい~♪ もうお嫁に行けない~♪ 


 翌日からチリーヌ王女は学園に来なくなったとさ。


 チャンチャン♪...って本当にこれでいいのか!?




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