第13話
タズミはハインツを丸っと無視して話し始めた。
「我が領地では狩りが盛んです。優秀な猟犬を多数産出しています。その猟犬の中でも特に嗅覚の優れた何匹かに、違法植物を使って作った所謂違法薬物の匂いと硝煙の匂いを覚えさせ、その匂いを辿って場所を突き止める訓練を行っております」
「なるほどね。その訓練はいつ頃まで掛かりそう?」
アズミが尋ねる。
「あと一週間もあればなんとか」
「続けて頂戴」
「分かりました」
「さて、マインツ様」
アズミはマインツに問い掛ける。宰相子息であるマインツはこの中で一番法律に明るい。
「法律に詳しいマインツ様にお聞きします。犬が嗅ぎ分けた匂いというのは証拠能力がありますか?」
マインツはしばし黙考した後、
「あります。犬の鼻は誤魔化せませんから。各国との国境警備所にも違法薬物や麻薬、爆発物の流入を防ぐために、そういった匂いを探知できる犬を配備しようという計画があるくらいです」
「なるほど。良く分かりました。ありがとうございます。それともう一つ、男爵家が違法薬物や銃火器を密造しているとのタレコミがあったとか言って、強制捜査に踏み切ることは可能でしょうか?」
「それは...」
マインツが言い淀む。
「可能ではありますが、もしそれで何も出なかった場合、ますます警戒されてしまうかと...」
「最悪、証拠を隠滅されてしまう可能性もありますよね...分かりました。それは最後の手ということにしておきましょう」
アズミは全員に向き直って、
「他に何か進展のあった人は居ますか?」
するとここでヤインツが手を上げた。
「進展という訳じゃないんだが...この中で唯一ホヘットと同じクラスなのが俺なんだ。彼女は最近休みがちでな。たまに登校して来ても、今まで親しくしていた男友達からは敬遠されてるみたいだし、俺の所にも近寄って来ないんだ」
「あぁ、それはですね、あの女に誑かされていた子息達にも解毒剤を飲ませて、あなた方に渡したペンダントも付けるように言っておいたからです」
「なるほど...だから孤立してるんだな。元々女子の友達もほとんど居なかったみたいだし」
「それはあの女の自業自得だからいいんですが...そうですか...休みがちなんですか...」
そう言ってアズミは難しい顔で考え始めた。
「アズミ、何か気になることでも!?」
ハインツが堪らず尋ねる。
「いえね、このタイミングで休みがちになるってことは、事が露見しそうになったと見て逃亡を図る気なんじゃないかと思いまして」
ハインツは目を見張った。
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