第15話
男性陣に疑いの目を向けながらも、今回だけ女性陣は信じることにした。
「取り敢えず犬の訓練待ちってことで、次は一週間後に集まりましょうか。それまでは各自、自分の役割をしっかり果たして下さいね? 何か動きがあったら、すぐ私に連絡を。以上です」
いつものようにアズミが場を締めて、この場はお開きとなった。
「なぁ、アズミ。ちょっといいか?」
「どうしました?」
ハインツに呼び止められたアズミは訝し気に振り返った。
「その...このあと一緒にお茶でもしないか?」
「どうしたんです? 急に?」
「いやその...ここのところ婚約者らしい語らいが無かったなと思ってね...どうだろうか?」
ハインツがモジモジしながら続ける。
「ふ~ん...語らいですか...」
アズミが目を細めた。
「そう言えばカズミはマインツ様と一緒に、今王都で一番人気のオペラを観に行ったそうですよ? なんでもマインツ様がプレミアチケットを手に入れたそうで。ラブラブでいいですよねぇ~」
「へ、へぇ~...それ凄いね...」
ハインツの目が泳ぐ。アズミは続ける。
「サズミはヤインツ様と馬で遠乗りしたそうです。その後はお洒落なコテージで一泊したとか。とっても美味しい山の幸を堪能したようです。食べてみたいなぁ~」
「へ、へぇ~...そうなんだ...」
ハインツの目がますます泳ぐ。アズミは更に続ける。
「タズミはラインツ様と温泉旅行に行ったそうです。美人になると噂の名湯だったそうで。お肌がツルツルになったって自慢してましたよ。羨ましいなぁ~」
「へ、へぇ~...行ってみたいね...」
ハインツの目は泳ぎっ放しだ。アズミはまだまだ止まらない。
「ナズミはワインツ様と一緒に教会のバザーに参加したそうです。まるで店を経営している夫婦みたいだって評判だったそうですよ。仲良しでいいなぁ~」
「へ、へぇ~...羨ましいね...」
ハインツの目は泳ぎ疲れてしまった。アズミはニンマリと怪しく微笑む。
「それで? ハインツ様? なんでしたっけ?」
「あぁ、え~と...その...」
ハインツは固まってしまった。
「どうしました?」
アズミが優しく催促する。
「...その...後日、王都で一番のホテルの最上階にある展望レストランを予約するから、一緒に食事をしてくれないだろうか?」
「フフフッ! えぇ、喜んで! 楽しみにしてますわね!」
アズミは花が咲くような笑顔を浮かべた。ハインツはホッと息を吐いた。
だがこの約束が守られることはなかった。
何故なら...
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