十一、強き母からの愛情
二人の強い男子を育てた、母も強い人だ。父が海軍に行き、家を開けてからは、母が一人で家を支えた。その力強い腕で、工場で働いて、家族を
兄二人は、「わしらのも食え」と
「ええよ。アンタらは、立派な海兵さんや、お
我が身を
「ユウは、
皆が注目するくらい上手な、ユウの
「あの子、ばり上手じゃのぉ」「すげぇ、すげぇ!」
皆が、ユウを見て、
ユウは
そんな人たちからは、「鞠突きちゃん」と呼ばれた。
それで、ユウが鞠突きをしていなくて、勉強や読書をしていると、「鞠突きちゃん、鞠突きはせんの?」と声をかけられることも、しばしばあった。
最年長の男子である、長男との思い出で、印象に残っているのは、雨の日だ。ご飯の買い出しで、雨の中を歩くとき。一つの傘に二人で一緒に入る。互いの距離が近くなるから、長男とユウだけの空間ができて、貴重な時間なのだ。兄妹の中で一番年上で、一番しっかりしている長男は、母の
そんな長男と、二人きりでいるのは、
梅雨や夏の時期には、急に雨がふり出してきて、帰りが不安になる。すると、長男が傘を差して迎えに来てくれる。ユウは、不安な気持ちが
次男とは、近所を走り回っていた。次男は常に元気な人で、じっとしていられない。座って話をしている時も、上半身の身振り手振りで、話を
普段は静かなユウだが、次男の元気さに
海兵になりたいと言っているくらいだから、兄たちも、海が好きだ。次男は、ユウや近所の友達を連れて、
海は
顔も見たことのない、父に、手紙を書いた。それは、学校の授業の中で、お国のために戦っている家族に、手紙を書こうというものだ。そこで、ユウは、父に手紙を書いた。
私が生まれてすぐに、海兵さんになって、顔も知らないけれど、お国のために、命をかけて、戦ってくれて、ありがとうございます。日本が戦争に勝って、お父さんの顔を見ることができることを、楽しみにしています。
といった内容である。書いてポストに
ユウと二人の兄とは、大きな
二人とも、ユウが小学校を卒業しないうちに、海軍の方へと
次男を見送った後、母はしばらく
パシン! と母は、自分の
「これから、寂しくなるのぉ。でもな、ユウも兄ちゃんたちや、お父ちゃん見たいな、強き男子を支える、強いお
兄二人が巣立ってからは、ユウは一人になった。完全に一人になって、急に毎日が、つまらないものになった。
基本的には、ずっと家にいるようになった。たくさん本を読むようになり、図書館にも行って、本を読んだり、
一人で、
海人というのは、子供思いの母からの、とても大きな
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