三、甘くきらびやかな闘いの始まり
高貴な姿へと変化を
「緊張されていますね」
「あ…はい。私、今後、どうなるのかなって」
「貴方様は、ここでずっと暮らすことになります」
「ずっと?」
「はい。この
「それで、ここにきたのは、私だけ?」
「はい。特別、主様がお
主の部屋の前まで来ると、
「失礼いたします」
「どうぞ」
障子の向こうからは、クールで甘みのある男性の声がした。ユウの耳に深く
「おかえり。
部屋の中は、さっきの衣装部屋よりも、だいぶ広い。主様の部屋、ということに相応しく、きらびやかだ。そして、使いのものたちに囲まれて、一番奥で座っている、あの男性。水色と赤色の、派手な
「はい。ただいま戻りました。
「彼女だね。いらっしゃい」
主様は、使いの後ろを歩くユウに、優しく
「
彼は
そして、意外にも、若い方だった。ユウとも大きな差がない。
ユウは、目を見開いたまま、しばらく
「やはり美しいですね」
「この着物は、衣装係の
さらに、
「菊の花言葉は、『高貴』『
「うん、それじゃあ、この宮中に
名前? ユウは
「『
またしても菊。ユウには、そんなにも菊の印象が強いのか。
「では、この宮中を見てまわろう。僕が
「はい。失礼いたしました」
「安心して。僕はそんなに厳しくはないから。もっと気楽にいこ」
「ここは
「……広いですね」
「そう。いろんなものを飾ってるからね。僕、
「けまり……。私は、まりつき昔やってました」
「へぇ、そうなんだ。上手いの?」
「まあ、かなり上手い方でしたよ」
「じゃあ、今度、君に
主は、間髪を入れずに返してくるから、困ってしまった。
「……あ、でも、今はあんまりやってないです」
「そうなんだ」
それと、とユウは
「さっきから、女房とか、ナンボウとかって言ってますけど、何なのですか?」
「僕の使用人だよ。女房は女の使用人で、男房は男の使用人」
「あー、なるほど」
「まさか、お嫁さんだとか思ってた?」
「い、いや、違います」
ユウは、
「さすがに、そんなにたくさんいないよ」
「中に入ってみよ」
庭間に降りると、ジャリジャリと音が鳴った。
「周りには、松・竹・梅。大きな
すごい。正月によく見る、
「こっちの池には
これもまた、大きめな池だ。そこには小さな亀が数匹。のびのびと泳いでいた。
「鯉はいないんですね」
「鯉は、ここの下にたっくさんいるから」
だんだん、
ユウも幼いとき、男子たちが空き地でごっこ遊びをしているのをよく見た。二人の兄たちも、その一員だった。とても楽しそうに遊んでいた。遠い記憶にしか残っていないユウの父も、二人の兄たちも、
「
「はっ、はい」
「まだまだ、見てる?」
「……あと、もう少しだけ」
「うん、いいよ。好きなだけ見てるといいよ」
どっちとも言えなくて、よく分からない。ユウは沼に落とされながらも、負けてしまわないように、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。