四、珍しき優しい主様
「次の部屋は
温かみのある、
屏風の前には、
「なんだか。すごい」
「そうだよ。彼らの演奏の
お
ユウと
お願いします。と再び言うと、尺八を
その瞬間に、ユウは引き込まれた。まるで流れる川のように、
随一の腕の演奏に聞き
そして演奏が終わり、元の世界に戻された
ごめんなさい! ごめんなさい! と、何度も何度も頭を下げて、ユウは
「そんな、
「だって、ぬ、主さ……」
クイっ、と顔を持ち上げられ、目の前には、
「僕が主だからといって、一線を引いてしまう必要なんてないんだよ。それじゃあ、僕は
ユウは、自分の心臓が、あとちょっとで
手を
すごい。この三文字が、ユウの
「演奏も終わったし、次のところに行く? それか、楽器とか見ていても良いよ」
「あ、次、行きたいです」
「
それはまるで、次に行く部屋が、ユウが好まないようなところだと、言っているようだ。勉強でも、するところだろうか。
ユウの予想は、外れてはいなかった。
「ここは僕の
なるほど。しかし、それはハズレだ。ユウは、読書好きの少女。表に出てワイワイするような人間ではなく、
「いいえ。私、こういうのは好きですよ」
「あら、そうだったんだ。僕は、文章を書くのが好きでね。毎晩、日記のようなものをつけたり、歌を
素敵だ、まさに平安貴族って感じ。
「
そして、
「ここはもう終わりだよ。小さいし、僕の個人的な部屋だからさ」
早くも、この書斎を出ることになった。ちょっと惜しい。数秒だけ見つめた後、くるりと
「ここが、君のお部屋だよ」
「この部屋は、とてもすごい部屋なんだよ」
すごい部屋? 今までずっとすごかったけど、あれよりもずっとってこと?
外の世界の、
「この景色をずっと
「お部屋紹介は、ここまでだよ。しばらくは、ゆっくりしてて」
「あ、ちょっとまって」
ユウは、部屋を出て行こうとする、
「どうしたの?」
「あの、黒っぽい小屋……お
ユウの目に入ったのは、この青の海の遠いところにぽつりとある、黒い屋根の、ごく普通の倉。ごま粒くらいの大きさしかないほど、遠いところにあるのに、一色しかない世界によって、
「ただの倉だよ。じゃあまた、ご飯のときに。女房が呼びにくるから、よろしくね」
それから、
失礼します。と、声がした。入ってきたのは、
「どうですか? この宮中は」
「とっても素敵だったよ。
「あれは、本当に
「
「
「
「主さまの方はどうでしたか」
「うん、すごく心優しい方だったよ。主様っていう、一番上の人なのに、全然そんな
「珍しい」
「ああいう上の立場の人って、
「横柄な態度なんて、全然取られない。その上、
ユウも、
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