十、お箏の稽古
朝食を済ませた後。ユウと
「わぁ、お
お
「よろしく、
辰巳は、女房に挨拶をした。
「はい。任せてください」
彼女は、
「では、始めますね」
「じゃあ、僕は部屋に戻るね」
そう言って、辰巳は、
「よろしくお願いします」
ユウは、
「では、まず、この楽器の簡単な紹介から」
彼女による、お
「この楽器は、
「お
「一般的には、
「はい」
「では、弾いてみましょう。
「わかりました」
ユウの右の、
「
女房が尋ねた。
「はい。ないです」
この三本の指に、ピッタリと合っていた。
「それでは、まず、上から全部の
言われた通りに、上から下まで、なぞるようにして、弾いてみた。
タラララ、ララ、ララ。
ちょっと、ぎこちなかったが、
タラララ、ララララ。
「さっきよりも、お上手ですよ。では、曲の方へ」
女房は、着物の中にしまっていた、紙を取り出した。お
「この歌は、お
頭の部分だ。
「せっかくの
「えーっ!」
「だったら、皆の前でやりましょう」
「そうですね」
勝手に女房たちの間で、話が進められている。ちょっと待って。聞いてないよ。でも、練習するからには、
気持ちが
「大丈夫。簡単なやつなので、マシな
実際の練習が始まった。さすがは、プロの
弾き始めて、思っていたよりも早く、だいたい良いところまで、
女房の二人からも、「センスがありますね」「すごいです」と
「早くも、皆に見せますか?」
「い、いいえ。まだ、練習したいです」
早く上達してしまうと、
緊張の時。ついに来てしまった。緊張で
「そんな、ガチガチにならなくっても良いのですよ。すごくお
「頑張ってくださいね。
二人に後押しされるも、緊張というか、
皆が見ている前で、お
演奏が終わると、お
「素晴らしかったよ。前から、お
主様は言った。
「いえ、今回で、初めて弾きました」
「なのに、この
才能。そう言ってもらえるのは、もちろん
「でも、すごく、
すごく尊敬する。
「そりゃあ、
「主様にそう言ってもらえるなんて、
彼女は、
このままじゃ、本当にまずい。まさに、今が
それは……、絶対に
海人とは、ただの恋人っていうだけの関係ではないのだ。彼には、母の、家族の愛情も、詰まっているのだ。
ユウは、引っ込み
「ユウ、兄ちゃんはな、大きくなったらのぉ、立派な海兵さんになるんじゃ」
「わしも、大きくなったら、強い海兵さんになるんじゃ」
二人の兄たちは、ずっと昔から、幼いユウに対して、そう言っていた。
「んで、ぶちデッカい
「ドーン、ドーン! て
「敵国なんて、わしら日本がコテンパンにする!」
「そうじゃ、コテンパン」
楽しそうに夢を語る、兄たちを、ユウも楽しく聞いていた。
ちなみに、ユウの父は、ユウが生まれてすぐに、海軍へ行った。だから、ユウに父の記憶はない。母や兄たちが、父のことをよく話していたので、存在自体は知っていた。
その、父の背中を追うように、長男が海軍へと巣立って行った。それを追って次男も、海軍へ
と入った。巣立つ直前の、兄二人の姿は、凛々しきものだった。
「お母さん、タケル、ユウ。行ってきます。お国のため、
「お母さん、ユウ。行って参ります。お国の勝利のため。お父さんやお兄ちゃんのように、強く
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