十三、一番好きな人
「だから、
こうなってしまった、
あの
「おはようございます、
夜の間は、全く眠れなかったくせに、朝になってから、
「
「顔色が悪いですね。お熱でもありますか?」
と、おでこに手を当てられた。
「……ないと思う。……ただの
「そうですか」
「まあ、気にしないで」
ユウは
「お気をつけ下さいね」
「はあい」
まるで
お
重い身体でご飯を食べているユウに、主様は
「今日は、
主様は言った。皆は、ざわざわとしている。
「
「うん、すごく面白い話だよ。それで、見せたいものがあるんだ。
「はい」
男房は、持っていた
「ありがとう」
お礼を言って、
そこには、何とも
「……何ですか、これ」「恐ろしい」
これを見た、皆は
「これは、
「ここの
錦の國、その一面に広がり、たくさんの赤い鯉たちが泳いでいる、
本当にいるものなの!? 恐ろしいと思った。皆も震えている。
「ええ、どうしましょう」「怖い……」「ああ、イヤだ」
震えている皆を見て、主様は笑った。いじわるな笑みだった。
「大丈夫だとは思うよ。あくまで、古い言い伝えのものだし、宮から離れたところだから、宮から遠ざからなければいいんじゃない」
何だか、主様は楽しんでいるみたいだ。皆を怖がらせて。そんなイタズラ好きなところもあるのか。ユウは
「絶対、宮からは離れないでおこう」「そうだね」
怖がる使用人たちが、口々に言った。
「あ、そうだ」と、ある女房が口を開いた。
「どうした?
「
それは、美しい白色の表紙の冊子本。
「皆さまだったら、何を書かれますか?」
「逆に、
「え、……私は、恋の歌をつづろうかと思うんですけど、なんだか、これじゃないなって」
「いや、いいじゃない。恋の歌」「だったら、自分で
他の女房たちが言った。
「あー、それはいいですね。だけど……
女房は、だいたいは
「あなたが一番好きな方を想って、
『一番好きな方』。ユウは、
「そうだね。
「……そうですか。ありがとうございました」
彼女のおかげで、
「お兄ちゃん! 行かないで! 死んだらダメ!」
これから、戦地に行こうとする兄たちに向かって、ユウは
「ずっと、ずっと、そばにいて! ずっと、ずっと! 私から離れないでよ」
すると、どこからか、顔を真っ赤にした、男の人がやってきた。
「貴様! 何をいう!」
男の人は、
「イヤじゃ! イヤじゃ! お兄ちゃん、行っちゃダメ!」
「この!
男の人は、力いっぱいに、ユウを
「イヤじゃ! 死なないでよ! ウミちゃんにも、お母さんにも、死んでほしくないよ。どうして? 何で行っちゃうの?」
涙が、ぶわっと
ボロボロで、ベタベタな顔になってまで、大声で
一人だった。いつの間にか、
そして、
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