十六、真赤の世界。二つの歌
しかし、本当に、ここに
「ウミちゃーん」「ウミちゃーん」
ユウは小さくつぶやくように、彼をの名前を呼んだ。もし、
ずっと考えを巡らせるばかりで、焦ったくなったユウは、考える間もなく、息をたっぷり吸って、
「ウミちゃーーーーん!」
前のめりになって、大きく
「ウミちゃん、どこかにいるの? いたら
ユウは、声を張り上げながら、どこかにいると信じている、
「ずっとずっと、探していたんだよ。会いたくて、会いたくて、
あの
「ウミちゃん!」「ウミちゃん!」「ウミちゃん……」
ユウの
やっぱり、いないんだ。ここには。じゃあ、どこにいるのかもわからない。ユウは止まった。
『
まさか。まさかそんな……。そんなことは、ないだろう。
『
二人が初めて
それは、
ふと、
『空も 港も 夜ははれて
月に 数ます 船のかげ
ユウは、おのずと歌を口ずさんでいた。二人で
「林 なしたる ほばしらに
花と 見まごう
港は いつも 春なれや」
今や、
そして、もう一つの歌。今度は、短歌の方。
『
それを思い出したユウは、口もとをにっこりとさせた。
「
ユウは大声で、はっきりと、この歌を口にした。“海人”のところを“ウミト”と言ったのは、ワザとだ。それを言い出したのは、もちろん
ユウが後ろを向くと、そこには、一匹の鯉がいた。他の鯉とは、どこか様子がちがう。その背中には、青色の
この鯉。もしかして。
ユウは鯉に近いた。鯉もユウに近づいた。すると、鯉は人間になった。それを見た
「ウミちゃん!」
「ユウ!」
青い
「やっぱ、その歌はわしの歌じゃの」
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