面白い小説その1 オリジナリティ(アイディア)
『公募における面白さとは、少数の人間だけに刺さる面白さではなく、商業的に成功する数の読者に刺さる面白さである』
前の考察でそう定義しましたが、加点要素となる面白さとは具体的には何なのでしょうか。
そのヒントになるものが、カクヨムにあります。カクヨムでは、大規模イベントに合わせて講評会なるものを開催することがあります。これは出版社(編集部)が公募作品に何を求めているかの目安であると考えられます。
その企画の評価項目は『オリジナリティ』『キャラクター』『ストーリー』『世界観』『文章力』の5項目です。
最後の文章力は一次選考における足切りで説明したので、残りの4項目が出版するために必要な要素(面白さ)であると仮定しましょう。
これは一般的な感覚とも一致しています。
映画を出てきたばかりの観客への出口インタビューを想像してみてください。よくコマーシャルなんかで撮られてるやつです。回答はだいたい次の4パターンです。
『すっごいアイディアに驚かされた』『ヒロインの○○が最高』『ラスト5分の展開に震えた』『リアルな世界に圧倒された』
それこそが、まさに評価項目にある4つです。
今回はまず、『オリジナリティ(新鮮なアイディア)』から考察します。
実は最近、アイディアには二種類あることに気づきました。
たとえばSFの古典に『宇宙戦争』という作品があります。高度な文明を持つ火星人が人類を侵略するために襲来するが、人類が敗北する直前で地球の病原菌のために自滅するという内容です。
ここで注目すべきは火星人が侵略するというアイディアを思いついても、それだけではリアリティのある作品にはならないということです。当時は月にさえ行けなかった人類と火星から攻めてくる宇宙人とでは技術文明のレベルが違いすぎます。普通なら必敗です。でも火星人の奴隷になるというラストにはしたくない。そこで、病原菌の設定が必要なのです。
同じような例として漫画の『大奥』という作品があります。
女が将軍、男女逆転した大奥が舞台となるわけですが、それだけではイマイチ、リアリティを感じられません。ですがここに『赤面疱瘡』というアイディアが加わると話が変わってきます。若年の男性にのみがかかる病気を設定することで、物語が現実のように生き生きとしてきます。
周りにいる人間全てが犯人、とか。この世界は実は巨大な宇宙船だった、とか。
初めて考えた人は偉いですが、それを下敷き(テンプレ)にした作品にはオリジナリティがあるとは言えません。それではどこでオリジナリティを出すか。それこそが上記で説明した設定をリアルに落とし込むためのアイディアなのです。
前に考察した異世界テンプレ『ハズレスキルしか持っていないので追放されたりしたけど、実は最強だったのでざまあする』ならば、『ハズレスキルがどうして最強だったのか』が、設定をリアルに落とし込むためのアイディアになります。異世界転生モノで『そのネタ』を考えて一点突破することが、もしかしたら現在もっとも書籍化に近い道かもしれません。
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