【補足 一次選考は突破しても……④】 募集要項の行間を読む
いきなり何を言い出すんだ。募集要項は文学作品じゃないだろう……そう思われるかもしれません。
これはつまり『募集要項に書いてある字面だけでなく、その中に含まれた意図を考えよう』という意味です。
よくあるのは「○○はダメって、はっきり書いてないからいいはずだ」とか勝手に判断して、作品を投稿するパターンです。小中学校の朝読の時間に読むことを前提に……とか書いてあるのに、大人向けのエロやパロディーで勝負しようとするのがこれに当たります。
朝読が対象となる場合、教育上よろしくないものを出版すると問題になります。
募集要項の明白な違反ではないので読んではくれるかもしれませんが、一目見て、「これは凄いから別のレーベルで出版しよう」とでも思われない限りは門前払いされるのがオチです。
これは比較的わかりやすい例ですが、何年か公募を続けてきて、ようやく最近気づいたこともあります。
カクヨムやなろうなどで『完結しなくてもいいし、字数制限もない』公募がありますが、これを応募側の自由度が高いと単純に歓迎するのはどうか、ということです。
公募は『受賞作の出版が前提になっている』ので、未完の作品でも応募できるということは、完結していない作品をとりあえず出版するという意味と同じになります。つまり打ち切りのリスクを最初から想定しているということです。
なろう系の異世界モノは設定がほぼ共通なので、読み慣れれば違う作品にもすんなり入りこめます。また、面白さの大部分は主人公が無双するまでの序盤に集中しているので、最終巻まで出さなくとも読者はあまり失望しません。
しかし、それはあくまでなろう系作品に限ってのことです。
完結を前提にした骨太のストーリーのハイファンタジーが序盤で打ち切られたら、読者は裏切られたと思うでしょう。ウェブ以外のほぼ全ての公募が完結を絶対条件にしていることからも、この場合において、未完結や数十万字にわたる大長編作品は明らかに不利であると考えられます。
ストーリーよりも序盤の雰囲気で魅せるようなファンタジー作品が受賞した例はありますが、募集要項に関わらず、なろう系以外の作品は10万字〜15万字で完結させた方が無難です。
そしてもうひとつ、最近気になっていること。児童文学系の公募でアイディアやプロットを募集したりしていますが、これは文章レベルの敷居が下がったのではなく、むしろ児童文学こそ文章力のレベルが高くなければ受賞できないことの裏返しではないかと思うのです。
なろう系の小説に慣れた投稿者は、文章の上手い下手はあまり関係ないと考えていますが、それはあくまでなろう系だけのことです。異世界や悪役令嬢など。同じような設定で、同じような作品を読んでいる読者をターゲットにしているならば作品独自の世界観を理解させる必要はあまりありません。実際に現在のラノベでも、なろう系以外の作品で受賞するには、ある程度以上の文章力が必要であると思います。
児童文学はどうでしょう。
読者は文章を読む訓練をこれから積む子どもたちです。また、本を買うのは親である場合も多いと聞きます。学校の活動のひとつであれば、教師の目もあります。
書籍化するにはしっかりとした文章力が必要であり、同時にそれを満たさない投稿者が多いからこそ、プロットを募集する必要があるのではないか。それが私の分析です。
人は常に自分に都合のいいように物事を考えてしまうものです。
しかし、それが結果として望みのない投稿を繰り返すことにつながるのだとしたら、再考する価値は十分にあるのではないでしょうか。
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