【補足 一次選考は突破しても……③】 作品の使いまわし

 公募作品の使い回しはいいのか。

 これも誰もが一度は悩んだことがある問題だと思います。もちろん私も例外ではありません。せっかく書いた小説が、たった一度の判断で決めつけられてしまうのは納得できない。それは自然な感情です。



 手書きで何百枚もの原稿を書いていた時代と違い、今では応募が非常に楽になりました。タグをつけるだけ、テキストデータに変換してポチッとするだけで簡単に応募できます。当然、同じ作品を何度も投稿する応募者も増えているはずです。

 これは募集要項を見ればわかることですが、他の賞で選考中の作品を公募に出すことは、ほぼ全ての賞でNGです。選考が終わった作品を別の公募に出すことはメフィスト賞などのごく一部の賞を除いて禁止とはされていません。同じ賞でも、例えば電撃大賞で一次選考落ちだった作品が翌年に同じ電撃大賞で受賞したという有名な例があります。


 ただし、同じ原稿を続けて見せられる方は、選考コストの増大を防ぐためにそれなりの対策しているはずです。

 具体的には同じ作品名、ペンネームの作品はチェックされているように感じます。電撃大賞の例では一次落ちというのがミソです。一次落ちの作品は多くの場合、外注の下読みひとりしか見ていません。

 私も他の賞で一次落ちした作品を別の公募に出して一次選考を突破したことがあります。逆に一次・二次選考落ちの作品を別の公募に出した場合は、一次選考も通過しませんでした。このことから、一次選考通過者などのリストで足切りが行われている可能性が疑われます。なろうやカクヨムからのウェブ応募などの場合は応募者全員のリストが作成されているはずなので、同じ作品名・ペンネームでの応募は1〜2年は避けた方が賢明だと思います。



 まあ、『そんな過去には引きずられずに新作を書け』というご意見もあるでしょうが……。

 実際、選考に落ちた作品にはその賞に落ちた理由があります。

 レーベルの傾向も含めて何らかの気づきを得て、それを踏まえた別作品を生み出した方が生産的かもしれません。

 ただし私の場合は年間で2作の長編を書くのが精一杯です。愛着もあり、可能性をあきらめきれないというのが正直なところです。



 ところで、話は少しずれてしまうかもしれませんが、私は結果が出なかった自分の作品を『失敗作』とかは言わないようにしています。

 『失敗作』として作品を切り捨て、自分はもっと上を書けるみたいなことを言っている人は『真の失敗作』しか書けなくなると思うからです。

 ガンダムの富野氏がそうでした。

 あの頃、神様みたいに思っていた彼が自分の作品を『失敗作』と呼んだ時には衝撃を受けました。その後の彼の作品には、過去にあれだけ溢れていた作品の魂がなくなったような気がします。


 失敗できるのは作品を書いた自分だけです。

 だからすべては自分だけの責任です。

 作品を切り捨てるのは、作品世界と自分との絆を切り捨てることと同じです。



 そのことを忘れた日が、私が本当の意味で筆を折らなければならない時なのでしょう。




 

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