足切りポイントその2 読者選考について考える
まず最初に断っておきます。
カクヨムコンテストの読者選考(中間選考)は、厳密に言えばこの評論で扱う一次選考ではありません。読んでいる方からお叱りを受けそうですが、これには根拠があります。
思い出してください。最初の論考で、一次選考の目的は『受賞の可能性のない応募作品を選別して除いてしまうこと』だと仮定しました。読者のみによる選考は、この仮定に合わないのです。
『ウェブ小説でランキングを上げるためには、作品本来の質だけでなくある種の宣伝や公開のタイミングなどのテクニックが必要である』
このことに異議を唱える人はもはやいないでしょう。つまりランキングが低いからといって、必ずしも書籍化できない作品であるとは限らないのです。
また、読者選考を通ったとしても、それがイコール受賞の可能性のある作品となるわけではありません。本来の一次選考で行われる選別を通過していないので、通過作の中には、なんらかの理由で書籍化できない作品が混じっているはずです。
つまり読者選考の後で、別途に本来の意味での一次選考が行われているはずであり、 読者選考そのものはむしろゼロ次選考と呼ぶ方がふさわしいのではないかということです。
それではどうして、わざわざ読者選考をするのか。それは最初の定義にはない別の理由、つまりウェブ小説サイトを盛り上げたいという目的があるからだと考えられます。同時に、読者選考によって埋もれてしまう傑作が比率としては小さいはずだという計算もあるかもしれません。百パーセントではないにしろ、読者から評価されない作品は、出版できないレベルの物が多い。つまり読者選考には通常の一次選考の効果もあるとの仮定です。
実のところウェブ小説サイトに掲載した作品で応募できるタイプの公募でも、読者選考だけで一次選考をするのは少数派です。なろうのウェブコンテストはブックマークが少なくても受賞の可能性があると明記していますし、カクヨムでも読者選考オンリーではないコンテストの方がむしろ多数派です。
しかし、募集要項に何も書いてないからと言って、ウェブ小説サイト上の公募で読者選考が考慮されないとは限りません。
今年度のHJ小説大賞には、おそらく読者選考があったと思われます。実際にいくつかの公募作品を眺めましたが、この論考の定義では明らかに一次選考は通らないと思われる作品が通り、通る可能性が高いと思われる作品が落ちていました。差はサイトの中での読者評価です。
もちろんそのような作品は、二次選考では落ちていました。
サイトを盛り上げるために読者選考を取り入れる公募には、特徴があります。それは一次選考の通過作品が異様に多いのです。盛り上げるなら多い方がいいし、同時に最終的な入選作品の質を担保したいという理由もあるかもしれません。
ここで、この章のまとめです。
読者選考は実質的にはゼロ次選考であり、文章能力などの一次選考要素が認められたというわけではない。読者選考が行われている場合は、ウェブサイトでの露出努力が必須である。読者選考のあるなしが明示されていない場合は、選考通過者の数の多寡が一つの目安になる。
次回はいよいよ一次選考最大のテーマ、文章力について解説したいと思います。
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