足切りポイントその4 カテゴリーエラーは勿体ない

 一次選考におけるカテゴリーエラーとは何か。

 最初の定義を思い出しながら補足すると、『その公募を企画した編集部(レーベル)では書籍化できないジャンル(または内容)の作品』となります。


 自分の作品の方が受賞作よりも絶対に面白い。それがもし真実であったとしても、書籍化できない作品を受賞させることはありません。そもそも受賞作の書籍化が入賞の条件となっているのですから当然です。


 推理小説の公募に異世界転生とか、女性向け恋愛小説レーベルで鬼畜ものとかが論外なのは誰にでもわかりますが、意外とやってしまいがちなのはレーベルの求める内容をこっちで勝手に決めてしまうことです。


 女性向けとされるレーベルでも、熱い男同士の友情物語は刺さるはずだ、とか。主に小学生が対象の公募で高校生を主人公とした作品を書いても、背伸びをしたい読者が支持してくれるはずだ、とか。子供向けのレーベルにも『君の名は』とかがあるんだから大丈夫だ。そう思う人もいると思います。


 ここでの問題点は、投稿者は出版内容を決める権限がないことを無視していることです。こうしたいから、こうであるべきだ。こうでなければおかしい。それはただの願望です。

 たまたまその作品が目に止まって、編集部の方針すら変えさせる。そしてその作品の力で想定しないバクチを打つ決断をさせる。その可能性がないとは言いません。ただし、その可能性が小数点以下であることは間違いないので、論考の対象からは外させていただきます。


 ちなみに『君の名は』のようにアニメで大ヒットした作品は、子どもでも映画を見ています。また、親が見ていて自分の子どもに薦める例もあるでしょう。ジブリなども含めて、実際に売れた実績があるからこそ書籍化できるのです。


 他にもエログロなどのレーティングも、広い意味でのカテゴリーエラーと言ってもいいでしょう。

 子ども向けレーベルに極端なエログロを持ってくる人は滅多にいないでしょうが、意外とあるのが『独自性を出そうとしてわざとレーティングに触れる』例です。たとえば教育的なレーベルにわざとエロを入れて、これも性教育だとか。女性向けの恋愛レーベルにグロを入れてリアリティを出したとか。

 他にそんな作品がないから、それは独創性だ。そう思うのはたぶん勘違いです。そのような作品は落とされるからこそ、世に出ないのです。

 もちろん、仮にエロを認める児童文学レーベルやグロを認める恋愛小説レーベルがあるのであれば、そこで勝負するのはありです。しかし、その場合はエログロは独創性ではなくなることを忘れないようにしましょう。



 ここでこの章のまとめです。


 カテゴリーエラーの作品とは『その公募を企画した編集部(レーベル)では書籍化できないジャンル(または内容)の作品』である。

 自信のある上級者ほど自分でカテゴリーを勝手に決めようとして、そこから外れる傾向がある。


 さて、次回は小説の書き方のセオリーと足切りとの関係について考察したいと思います。


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