足切りポイントその5 一次選考者とセオリーの罠

 公募に向けた小説を書くのには、セオリーがあるって聞いたことはないでしょうか。

 専門学校や指南本みたいなもので教えてくれるようです。私がチラッと見聞きしたのは、『冒頭で酒場のシーンで始めるはNG』、『回想シーンを入れるのはNG』とかです。もちろんそういう作品はいくらでも存在するのですが、公募では避けた方が無難のようです。


 理由を考えましょう。プロの作品には存在しているのにプロを目指す場合はやってはいけないのであれば、それは初心者がやると失敗しやすいパターンであると考えられます。あえてそこに言及するほどのセオリーになっているのであれば、それこそウンザリするくらい失敗している例が多いのでしょう。


 でも、そんなことを気にして小さい小説を書いていても仕方がない。出版社の企画を形にするセミプロライターを目指すならともかく、オリジナルで勝負するならそんなセオリーに縛られてなんかいられない。

 それに、上手く書ければ問題がない。選考委員もそれはわかるはずだ。


 私もそれが正論だと思います。ですが、一次選考の足切りを避けるという意味では間違いです。そうあって欲しいと、そうであるとは違うことなのです。

 セオリーを破ることによって作品を台無しにする確率が大きくなるのは、おそらく事実でしょう。当然、選考に関わる人間はそれを嫌と言うほど見ています。またかよ。そう思われることが、一次選考突破に有利に働くでしょうか。


 同じような例では、人称や視点などの技術的なセオリーがあります。

 一人称と三人称をまぜないとか、視点をなるべく動かさないとか。これも技術によっては色々なやり方やバリエーションがありますが、下読み段階で拒絶反応を引き出す可能性があるのは同じです。


 一次選考突破を目標とするならやらない。それを承知で自分の書き方をする場合にはせめて、それを理由として落選しても納得するくらいの覚悟は必要でしょう。



 ここで、この章のまとめです。


 公募作品を書くためには、失敗しやすいパターンを避けるためのセオリーが存在する。それを無視して作品を仕上げることも不可能ではないが、難易度が格段に上がる上に、選考者に悪印象を与える可能性がある。



 さて、これまで5回にわたって足切りポイントについて解説してきました。基本的な足切りポイントとして現在、私が考えているのはその5つです。


 次の章では今まで解説してきた足切りポイントのまとめをしながら、一次選考を通過する作品について考察してみたいと思います。



 

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