出版社の戦略と公募との関係
プロ野球のドラフト会議の例で説明しましょう。
ある年には投手ばかり六人指名することがあったり、別の年には捕手を三人も取ったりすることがあります。また、監督の方針で足の速い選手や守備の上手い選手ばかりを集めることもあります。
もちろん百六十キロの剛速球を投げてホームランも打てる大谷選手みたいなのがいれば話は別ですが、勝つために野球をする以上、実戦で使うための補強ポイントがあるのは当然のことです。
これを公募に当てはめてみましょう。
異世界転生モノを最低でも半分は出版したい。特に今の流行りにハマるモノが欲しい。そういう販売サイドの要求があれば、それが無視されることはありません。少なくとも有利に働くことは間違いないでしょう。
つまり、それが二次選考以降で考慮される加点要素の一つです。
これはジャンルだけではなく、ストーリーにも当てはまります。ハッピーエンドがいい。あえてブラックな要素が欲しい。あえて最後まで行っちゃう(あるいは行かない)ラブストーリーを本にしたい。
仮に販売戦略にピッタリとハマるものがあれば、受賞の確率はかなり上がるはずです。
具体的に何が求められているかは受賞作品を見ればだいたいの傾向はわかりますが『それでは遅い』こともあります。さっきの野球の例ではありませんが『その選手が欲しかったのはその年だけ』ということもあるからです。
わかりやすいジャンルの例としては、異世界転生があります。
魔法学院モノ、転生して町を作ったりする育成モノは、今はあまり見かけません。『最強の○○に転生したけど真面目に戦うのは疲れるのでスローライフしたりモフモフと遊んだりする』のも、以前のような勢いはないように思えます。
今は『ハズレスキル(なぜか鑑定スキルが多い)しか持っていないのでバカにされたり追放されたりしたけど、実は最強だったので見返す』パターンが全盛ですが、『見返す』が『復讐する』(いわゆる、ざまあ)に移行しつつあるのはブームの終焉の兆しであるような気がします。
人間はパターン化された刺激に慣れると、より強い刺激を求める傾向があります。
かなり昔に『白虎とか青龍なんかの怪異が現代社会に蘇ってくる』みたいな伝奇小説ブームというのがあったのですが、そのブームも内容がエログロに流れていくと共に勢いを失っていきました。それと同じように、モラル的に共感を得られない作品群はブームとしては長持ちはしないような気がするのです。
実際に、ざまあ系がこれからどうなるかはわかりません。これはあくまで個人的な予想のひとつとして書いたものですので、ご承知おきください。
さて、それでは実際に次に何がくるのか。
それがわかれば苦労はしません。出版社ですら予想しきれていないはずです。ただし、これが来そうだと選考委員に思わせれば間違いなく有利ですので、考えてみる価値はあるでしょう。
次回からは最大の加点要素、作品の面白さについて考察してみたいと思います。
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