面白い小説その2 キャラクター

 小説にとってキャラクターは単なる状況説明の道具ではありません。

 魅力的な主人公は読者に共感を与えることができますし、リアルなキャラクターは物語の臨場感を高めてくれます。読者がその物語に入りこめるかどうかは、キャラクター次第と言っても過言はありません。


 それでは、魅力的なキャラクターとは何でしょう。

 個人的には魅力的なキャラクターの条件は『設定として魅力的であること』と『リアルな存在感があること』に分けられると考えています。

 たとえば共感を得るために主人公を平凡な男子高校生にするのはいいのですが、それだけではのっぺりとした作品になってしまいます。サブキャラを強烈な性格にしたり、主人公にも意外な弱点などがあったりすると作品が立体的に見えてきます。もちろん物語にうまく調和させることが前提ですが、魅力的な人間がたくさんいた方が楽しい作品になるのは間違いありません。

 また、キャラクターがリアルであることも大切です。天才軍師なのに単純な敵の計略に引っかかったりすると読者はアレっとなります。明らかにゲスで裏切るとわかっている人間を許す場合、自分だけが被害を受けるならいいのですが、他人を巻き込んで不幸にしたりすると主人公は独善的な愚か者になってしまいます。行動から導き出される人格と設定上の人格に乖離があると、キャラクターは生命力を失います。設定を紙に書いて顔に貼ったキョンシーみたいになるわけです。


 他にも、キャラクターを書く上で注意するべき点があります。

 よく『キャラが命を持って勝手に動く』と言っている人がいますが、それは『そのような見えるだけ』ではないかと疑ってみてください。例えるなら心霊写真のようなものです。

 『全部は説明できなくても、そのほとんどは別の現象で説明できてしまう』

 キャラクターを動かすことは人形遊びに似ています。基本設定が細かければ細かいほど、感情移入が深ければ深いほど、その人形には独自の個性があるような気がしてくるものです。


「もうご飯の時間だから、お友だちは帰ったってことにしてお人形を片付けなさい」

「私もそうしたいんだけど、リカちゃんがまだ帰りたくないって言ってるの」

 みたいな感じです。


 もちろん、詳細に設定したキャラクターを心を込めて描き出すことが、小説を書く基本であることに間違いはありません。

 ここで何が問題になるかというと、勝手にキャラが動くんだからストーリーの展開がおかしくなっても修正できない。キャラクターだけはプロにだって負けない。などと安易に思ってしまうことです。(本当にそうなら、いいのですが)

 

 『鬼滅の刃』のキャラクターは実に生き生きしています。

 思考停止になる前に自分の好きなプロの作品と並べてみると、より高みが見えてくるのではないでしょうか。

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