3
楓くんと初めてのデートしてから数日。花純ちゃんと部活に行く途中で、知らない女子に体育館裏に連れてかれた。その人達はこの前のデートを見ていたらしく、その事で文句が、言いたいらしかったけど、どんどんエスカレートしていった。
「ねー、聞いてんの~?さーくーらーさーん!」
「あんたが一緒にいると、楓迷惑だって言ってたらしいよ~」
「あ、それ、私も聞いた~。なんか~・・・」
その言葉がグサッとくる・・・。最初は、私もそう思ってたから。私なんかが一緒にいて良いのかって、ずっと思ってたから。
「・・・」
私は耐えるしかなかった。そんな時、「咲良!」という声が聞こえた。
「あ、楓!」
その声を無視して、女の子達をどけて、私のそばまで来てくれる。
「ねぇねぇ、この子と付き合ってるって、本当?」
「お前らには関係ねー。」
楓くんは冷たくそう言うと、震えている私にそっと手を差し出して、ただ「行くぞ」とだけ言った。私がその手を取ると、そのまま輪の中から出してくれた。
学校を出て駅に向かう途中、楓くんが告白してくれた公園に寄った。
「ちょっと待ってろよ。」
「···うん」
そう言って楓くんは自販機の方に行って飲み物を二つ抱えて帰って来た。そして片方を私に渡す。
「へ?いいの?」
「喉、渇いただろ?」
「うん。あ、じゃあ、お金···」
「いいよ、おごり。」
「···ありがとう」
そう言って楓くんは蓋を開けた。私も開けて飲み始める。
「それで?何があった?」
唐突にそう聞かれ、驚いていると楓くんがさらに「何かあったんだろ?」と重ねてくる。私は下を向いた。
「話してくれないか?」
「···楓くんと初めてデート行ったじゃない?」
「ああ」
「あれ、見てたんだって、あの人達。」
「え!?」
「それで、『これ以上楓くんといるな、迷惑だ』って言われて···。」
「···そっか。」
なんとか涙はこらえた。でも、楓くんから聞きたくない言葉が発せられた。
「咲良が嫌な思いするなら、別れた方がいいかもな···。」
「え!?」
そんな事考えた事もなかった。考えたくなかった。言われたくなかった···。
「俺、咲良には笑っていてほしい。だから、咲良が泣くような事は避けたいから···。こんなの、身勝手だけど···。」
「いや···。」
「え?」
心の声がこぼれ落ちた。でも、もう、抑えられない。
「嫌だ!」
「咲良···。」
今度こそ、涙が溢れてきた。でも、もう止められない。
「だって、楓くんといるのが私の幸せだもん!一緒にいられるなら、嫌がらせを受けるのだって平気だもん!でも···でも、楓くんといられないのは耐えられないよ···。」
「···」
「だから、だから···」
その後は言葉にならなかった。 次から次へと涙は溢れてきた。やがて、楓くんが「ごめん」と言った。
「ごめん、咲良。俺、お前の為にって思って言ったのに、傷つけたな。」
「楓···くん···。」
「もう、別れるなんて言わない。約束する。だから、もう泣くの止めろよ。言っただろ?俺、お前が泣いてるの嫌なんだ。」
「うん···。」
「そう言いながらも、まだ泣いてるし。ったく」
楓くんはそう言うと、いきなり頬にキスしてきた。って、え?
「え···?」
びっくりして涙が止まる。
「やっと泣き止んだな。」
ニヤッとして楓くんがそう言うので一気に私の顔は真っ赤か!···でも、嬉しくて最後は笑顔になれたり。
「あ、笑った。そうそう、そうやっていつも俺に笑顔を見せてくれよな、これから先ずっと。」
「···うん!」
これからも隣りにいていいと言ってくれてるみたいで、嬉しかった。
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