12
俺は今、人生最大の危機に瀕していると言っても過言ではないだろう。咲良を迎えに来たら目の前に咲良のお父さんがいるんだから。
「おはようございます。」
「···」
む、無言···!ど、どうしたらいいのか···。
「君、咲良の恋人だったね?」
「は、はい!」
急に言われてビクッとする。なんだなピリピリした視線を向けられ続けて、そろそろ限界···。咲良、早く来ないかな···。
「いってきまー···す···。」
そう言って咲良が出てくるけど、お父さんの顔を見るなり固まってしまった。でも、それも一瞬ですぐにお父さんを無視して俺のところに来た。
「楓くん、おはよう。」
「お、おはよう。」
挨拶をするとさらに痛い視線でこっちを見られて、俺はどうしたらいいんだ!
「咲良!」
大きな声を出されて咲良はビクッとする。震えながらお父さんの方を向く咲良の手を俺は握った。
「その男との交際を認める条件をやろう!」
そう言われて俺達は背筋を伸ばした。
「その男が次のテストで成績十位以内、そこに入ったら認めよう!」
ま、マジか···。今まで俺の成績はせいぜい二十位だ。それを十も上げろって···。
「分かりました。」
堂々と答えたのは咲良だった。
「楓くんが十位以内に入ればいいんですよね?」
「ああ、そうだ。せいぜい頑張れ、少年。」
そう言って咲良のお父さんは帰って行った。
「い、いけるかな?」
「···頑張ろ、それしか、出来ないから···。」
そう言った咲良の手は、震えていた。
「そうだな。うん、俺、頑張るよ。咲良、手伝ってくれるか?」
「うん!二人で頑張ろ!」
そうだ、これは試練だ。これが出来なければ咲良と付き合う資格はない。ならば、やってやろうじゃないか!
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