13

『その男との交際を認める条件をやろう!その男が次のテストで成績十位以内、そこに入ったら認めよう!』

 お父さんにそう言われて1週間。テスト前日。私は楓くんの家の前に来ていた。

〜遡ること二時間前〜

「お姉ちゃん!」

 私は学校から帰るなりお姉ちゃんに抱きついた。

「あらあら、どうしたの〜?」

「楓くんが、今日は徹夜するって言って帰っちゃった!!」

 お姉ちゃんはこの間の事を知っていた。だから、すぐに事態を察してくれた。

「楓くん、徹夜なんてしたら明日眠くてテストに集中出来ないかもしれない!具合悪くなっちゃうかもしれないし、どうしよう!!私何か出来ないかな!?」

「う〜ん、そうね〜···。」

 お姉ちゃんは、のんびりした仕草で悩んでからポンと手を叩いた。

「咲良が一緒に勉強みてあげたら?咲良が眠くなったら一緒に寝てくれるかもしれないよ?」

「そ、そっか!それは名案だよ!」

「二人ともちょっと待った!」

 そう割り込んできたのはお姉ちゃんの旦那さんの柳さんだった。

「女の子が軽々しく男の家に泊まっちゃいけません!」

 そう言われて我に帰る。そうだよ、男の子の家に泊まるなんて、そんな事していいわけない。

「じゃ、じゃあどうすれば···。」

「連絡して、夜食でも持って行ってあげたら?お腹いっぱいになれば寝ると思うよ。」

「そ、そうですね!ありがとうございます!じゃあ早速作って···。」

 あれ?でも···。

「どうやって行きましょう···。住所も分からないのに···。」

「連絡した時に聞けばいいと思うよ。電車で行くのも危ないし、僕が送って行ってあげる。」

「あ、ありがとうございます!じゃあ、そうします!」

 そうして私は準備をした。


 そして私は今楓くんの家の前にいる。柳さんとお姉ちゃんは少し離れた場所で車に乗って待ってくれてる。

 さっきからインターホンを押そうとしているのに、手が伸びない···ゆ、勇気を出せ私!

 ピーンポーン。

『はーい!』

 インターホンを押すと少し遅れて女性の声がする。

「あ、あの、三波咲良と申します。楓さんにお夜食をお届けに来ました。」

『はいはい、楓から聞いてるわ。今開けるわね。』

 そう言われて通話が切れる。そしてすぐに玄関から女の人が来た。

「こ、こんばんは。」

「はい、こんばんは。今楓呼んでくるから中入って。」

「は、はい。」

 玄関で待ってると二階から楓くんが降りてきた。

「咲良、お待たせ。」

「ううん、いきなりごめんね。」

「いや、大丈夫。すげー腹減ってるから。」

「そ、そっか。えっと、サンドイッチだけどいいかな?」

「ああ、ありがと。」

 楓くんにサンドイッチの入ったタッパーを渡すと楓くんは少し嬉しそうな顔になった。

「ほんと、ありがとな。夜食なんて貰った事ねえよ。」

「そうなんだ。あの、楓くん?」

「なんだ?」

「徹夜は、だめ。」

 私がそう言うと楓くんは意外そうな顔になった。

「何でだよ?」

「テスト勉強、無理しちゃだめ。今日まで頑張ったんだから、ここで無理して、何かあったら嫌だから。」

「そっか···。」

 楓くんは少し考えて、それから、真っ直ぐ私を見て言った。

「分かった。いつもの時間には寝るよ。無理もしない。」

「ほ、ほんと!?約束だよ!」

「ああ、約束だ。」

 そう言って楓くんは小指を出した。その小指に私の小指を絡める。いわゆる指切りをして、私は楓くんの家を後にした。

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