11

 放課後。図書館で楓くんを待ちながら課題を終わらせていた。

「あれ?咲良?」

 前の方からそう言われて顔を上げると楓子先輩がいた。

「あ、お疲れ様です。」

「お疲れ様。楓と勉強会?」

 そう聞かれて頷く。

「はい。楓子先輩は、花純ちゃんとですか?」

「そ、勉強教えてって言われて。で、その花純は?」

「今日日直で、先生に色々手伝わされてます。」

「そっか〜、じゃあもうちょっとゆっくり来れば良かったな〜。」

 私の斜め前に座った先輩は私の方をじっと見ている。

「あの···。」

「咲良は、楓との事、本気なの?」

 真剣な声でそう聞かれて、ちょっとドキドキする。

「な、なんで···?」

「楓から、昨日の事とか聞いた。お父さんの説得、大変そうだね。」

「あ···。」

 そっか、楓くんは信頼している楓子先輩に相談したんだ。誰かに相談して、答えを早く出そうとしたんだ。私が、ウジウジ悩んでるから。

「で?本気なの?」

「本気です。」

 ちょっと意地悪そうに聞く先輩に、私は真剣に答えた。

「父との事も、乗り越えてみせます。」

「そっか、それならいいんだ。」

 きっと、今までの楓くんを見てるから、楓子先輩も心配なんだ。でも、大丈夫。私は中途半端じゃ満足しないから。

 いつまでも、満足しないから。


「咲良、ごめん、先生に捕まって!」

「楓子先輩、すいません!先生に捕まって!」

 同じタイミングで来た二人はそれぞれにそう言って頭を下げた。

「気にしてないよ!楓子先輩もいたし···。」

「そうそう、咲良と色々話せたし、それよりほら、二人とも座って、勉強しようか。」

 楓子先輩の言葉に二人とも座ってくれてほっとする。

「じゃあ、始めよっか。」

「はい、先生!」

 そう言って勉強会は始まった。図書館にいるのは私達と図書委員の人達だけ。静かに、たまに小さな声で質問しあう声がして、時間が流れた。

 楓くんも成績がそこまで悪いという事がないので、質問された所をアドバイスしながら答えに導くだけで事足りた。私も、いつもより勉強が捗った気がする。

 そうこうしてるうちに最終下校時刻のチャイムがなった。

「あ、もうこんな時間···。」

「う〜ん、じゃあ今日はこの辺だな。」

「よし、花純、帰るよ。」

「はーい。」

 そう言って各々帰る支度をした。

「楓くん、あんな感じの教え方で良かった?」

 昇降口に向かいながら聞くと楓くんは頷いた。

「すっげー分かりやすかった。ありがとな。」

「良かった〜。」

 誰かに教えることなんてなかったから少し不安だったけど、楓くんがそう言うなら大丈夫だったんだろう。

「ねぇねぇ、これからは皆で勉強しよーよ!」

 そう言ったのは花純ちゃんだった。

「そうすれば、私は楓子に、楓は咲良に、そして咲良は楓子にって聞く人が必ずいていいじゃん?」

「それ、名案だな!」

「俺は誰に聞くんだよ!」

 楓子先輩からそうツッコまれて二人でう〜んと悩む。そんな光景に、私と楓子先輩は笑ってしまった。

「冗談だよ!それいいな!」

「うん、皆でやった方が楽しいしね。」

 私達がそう言うと、二人はパァっと明るい顔になった。

「よーし、頑張るぞー!」

「目指せ赤点なし!」

 二人は同じように叫ぶと皆で笑った。こんな楽しい日々がこれからも続きますように。

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