10
昼休み。今日は大丈夫だろうかと心配しながら咲良の教室に向かうと廊下で咲良が女子に囲まれていた。
「咲良、どうした?」
女子をかき分けて咲良の元に行くとあの日みたいに震えてる様子はなかった。
「あ、楓くん。」
それどころか笑顔で俺の顔を見た。
「あのね、皆色々教えてくれてるの。」
咲良に言われて周りを見るがそこにいたのは俺達のことをあまりよく思ってないはずの奴らばかりだった。
「色々って···?」
「楓くんの事とか、恋愛の事とかだよ!」
咲良がそう言うと皆頷いた。
「この前のこと、本当に申し訳なかったって言って···。その罪滅ぼしにって教えてくれたの。」
「そ、そうなのか···。」
よく見ると、皆あの日みたいに怖い顔はしていなかった。それどころか、なんだか俺達を微笑ましそうに見ている。
「実はね、私達、最初はよく思ってなかったの。」
そう話し始めたのは昨日のリーダー格の女子だった。
「最初は楓を独り占めして面白くなくて、デートしたところを見て腹が立ってあんな事した。でも、今は楓が本気だって分かったから、もう邪魔しないってみんなで決めたの。その代わり咲良さんにアドバイスとかしてあげようって、ね?」
リーダー格の女子がそう言うと皆頷いた。そういう事だったのか···。
「さ、みんな、二人ともお昼だし、今日はこの辺にしとこ!教室戻るよ!」
「はーい!!」
そう言って皆帰って行った。
「皆さん、ありがとうございました!」
咲良がそう言うと皆笑顔で手を振った。
昼飯は咲良のリクエストから屋上で食べる事になった。
「わー!屋上なんて初めて来たよー!」
咲良は金網の外の景色を見て目を輝かせた。この学校は屋上に転落防止の金網柵をして、屋上を解放している。花壇も設置して中々いい感じに仕上がっている。
「屋上って綺麗だね!もっと殺風景かと思ってた!」
「そうだな。俺はよく楓子先輩と来てたけど、最初はびっくりしたもんな〜。」
「そうなんだ!私もこれからちょくちょく来ようかな〜!」
「そん時は俺も一緒な。」
「うん!」
こんな会話でも、咲良は楽しそうに話す。綺麗なストレートの髪が風に舞うところを見て、とても綺麗だと思った。
「さ、ご飯にしよ!」
満足したのか、咲良はそう言って近くのベンチに腰掛けた。俺も隣に座る。
「わー!楓くんのお弁当美味しそう!」
俺が弁当を開けると咲良は早速覗き込んで見てきた。
「ああ、かーさんに咲良と食べるって言ったから気合い入れたみたいだな。咲良のは···。」
咲良の弁当は女子らしい、可愛いものだった。
「彩りいいな。明日佳さんか?」
「ううん、お弁当と朝ごはんは私の担当。」
「ええ?咲良がこれを!?」
「うん。」
すごい、正直咲良は料理は出来ないと思っていた。
「あ、もしかして私料理出来ないと思われてた!?」
「い、いや、その〜···はい···。」
「あー、ひどーい!」
そう言いながら、咲良は笑った。良かった、本気で怒られたわけじゃないんだな。
「さ、早く食べよ。お昼休み終わっちゃう!」
「ああ。そうだな。」
他愛ない話をしながら昼飯を食べる。食べ終わった後も二人でどうでもいいような、でも大切な話をしていると、予鈴がなってしまった。
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