9

 次の日。今日も楓くんは迎えに来てくれた。

「はよ。」

「おはよう。今日も来てくれたの?」

「おう、毎日来るぞ!」

 そう言って楓くんは笑う。

「ふふ、ありがとう。でも、無理しないでね?」

「分かってるよ。」

 そう言いながら学校に向かう。

「なあ、昨日言ってた考え事ってなんだ?」

 そう聞かれてギクッとする。昨日、楓くんが帰る時「考え事もあるよ···。」とボソッと言ってしまったの、聞こえてたんだ···。

「え、えっと···。」

「あるんだろ?」

 不思議そうにそう聞かれて、私はなんて答えたらいいのかわからなくて、言ってしまおうと思った。

「楓くんに、お礼がしたくて···。」

「な、なんで···?」

「なんでって···、いつも助けてくれて、優しくて···私、なにもしてあげられないから···。」

 私がそう言うと楓くんは「う〜ん」と唸った。

「あ、そうだ!勉強教えてほしい!」

 閃いたとばかりに楓くんは言った。

「それで、お礼になる?」

「なるなる!俺、自慢じゃないけどテストあんまいい点取れないんだよ。だから助けてくれ〜!」

 そう言って楓くんは手を合わせた。

「それでいいなら、喜んで!じゃあ今日図書館で勉強して帰ろっか!」

「おう、よろしく頼む!」

 そんな事言ってるうちに学校に着いた。

「じゃ、俺教室行くな。」

「うん、またお昼にね。」

「ああ、迎えに行くから待っててな!」

 そう言って私達は各々教室に行った。

「あ、咲良、おはよう!」

「おはよう、花純ちゃん!」

「なんかスッキリした顔してるね。」

「分かる?実はね···。」

 花純ちゃんに昨日の話をすると、ニヤニヤしながら聞いてくれた。

「そっか、良かったね。」

「うん、それでお返しに勉強教えることになってね、楓くんともっと一緒にいられるようになったの。」

「おお、いいね!私も楓子に教えて貰おうかな〜。」

 そんな事を言っているとチャイムがなった。とりあえずまずはお昼になるのを待とう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る