第13話
ということでお昼休み、俺は東雲さんと一緒にご飯を食べることになった。
教室で食べてもよかったのだが、クラスメイトの視線がうるさそうだったので、中庭に移動した。
中庭なら、多少生徒はいるだろうが、教室よりは落ち着いてご飯を食べることができるだろう。
俺たちはベンチにこぶし数個分の距離を開けて座った。
「久遠さんは、お昼ご飯それだけなのですか?」
「そうだな」
東雲さんは俺が食べているたまごサンドを見てそう言った。
昼食は大体コンビニ飯だ。
俺のために趣味の時間を削ってまで働いてくれている母さんに弁当を作ってくれなんて、そんな図々しいことは言えなかった。かといって、俺は俺で徹夜をすることもあるから、朝、弁当を作っている暇はない。だから、必然と昼食はコンビニ飯になる。
「よかったら私の分食べますか?」
ピンク色の弁当箱を開いて、そう尋ねてきた東雲さん。
弁当箱の中には色どり鮮やかで、栄養もしっかりと計算されていそうな、おかずたちが入っていた。
「美味しそうな弁当だな」
「どうです?一つ」
東雲さんはそう言って、唐揚げを箸で一つ摘まむと俺の口の前まで差し出した。
美味しそうな匂いが鼻を掠める。
その美味しそうな匂いに、さすがに我慢できなかった俺はパクっと唐揚げを食べた。
噛んだ瞬間に肉汁がジュワーと溢れてきた。
なんだこれ、美味しい……。
「どうですか?」
「めっちゃ美味い」
「そうですか!よかった~」
「東雲さんやっぱり料理上手だったんだな」
「どうしてそう思ったのですか?」
「リンゴの皮むき、手際よかったからな。そうかなって思ってた」
「そうですね。料理は好きな方ですね」
そう呟いた東雲さんはどこか寂しそうな目に見えた。
何かありそうだな……。
そう思ったが俺は何も聞かなかった。
他人の事情に土足で上がり込む趣味はないからな。想像する趣味ならあるけどな……。
「それにしても暑いな」
「ですね。もうそろそろ、夏ですね」
季節の変わり目。
座っているだけなのに汗がじんわりと流れ出ていた。
春から夏へと変わっていく。
夏か……。そうか、夏か……!?
俺は隣に座っている東雲さんの太ももらへんを見た。そのチェック柄のスカートの下に隠れている、あの部分が見れるかもしれないな。
「どうかしましたか?」
「い、いや、何でもない……」
「もしかして、スカートの下が見たいのですか?」
スカートの裾に手をかけて、まるで俺の心の中を読んでいるかのように、小悪魔的な笑みを浮かべた東雲さん。
『現代の絶世の美女』のその顔の破壊力は言うまでもないだろう。
てか、俺、東雲さんにバレるくらい見つめてたのか……。気を付けないとな。
「そういうことは、あんまり言うもんじゃないぞ」
「そんなことはもちろん分かってますよ?久遠さんにしか言いませんよ……」
「はい?」
「何でもないですっ!」
東雲さんは弁当箱で自分の顔を隠してしまった。
まぁ、全然隠れてないんだけどね。東雲さんの頬はピンク色の弁当箱をさらに濃くしたような色をしていた。
照れた顔可愛いな……。俺は東雲さんに見惚れてしまっていた。
本格的にやばいな。これは……。三次元の女性にあんまり興味なかったんだがな。
「東雲さんの虜になりそう……」
俺がボソッと呟いた声はどうやら、東雲さんには届いていないようだった。
何かをぶつぶつと言いながら、弁当を食べていた。
「久遠さんのバカっ……」
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