第19話

 まだ、昼前ということもあって、お店の中にはあまり人がいなかった。

 そのおかげか、料理は割とすぐに運ばれてきた。


「おぉー。美味しそうだな」

「でしょ?味も保証しますよ!」

「それは楽しみだ」


 俺の前に置かれたお皿の上には綺麗な揚げ色の唐揚げが五つ乗っていた。

 東雲さんの前のお皿には綺麗な衣が付いたエビフライが三匹乗っていた。

 

「それじゃあ、いただきましょうか」

「そうだな」


 二人でいただきますをして、唐揚げを1個口に運んだ。その様子を東雲さんはジーっと見つめていた。おそらく、俺の感想を待っている。

 自分がおすすめしたものの評価は気になるよな。

 てか、そんなに見つめないでくれ……。

 俺は東雲さんから視線を外し、口に含んだ唐揚げを噛んだ。その瞬間、肉汁がジュワーっと溢れ出し、口いっぱいに広がった。噛めば噛むほど、肉汁が溢れ出してくる。

 美味しい。その一言に尽きる。

 俺が唐揚げを飲み込んだのを見て、東雲さんが聞いてきた。


「どう?」

「うん。さすが、東雲さんのおすすめだね。美味しい」

「よかった。不味いって言われたらどうしようって心配だった」

「さすがに、不味くても本人の前では言わないだろ」

「まぁ、確かに本人を前にそれは言わないですね」

「だろ。てか、この唐揚げは本当に美味しいから安心していいよ」

「じゃあ、次はエビフライを食べる?」

「本当にもらっていいのか?」

「はい」

「じゃあ、唐揚げと交換で」


 俺の唐揚げ2個と、東雲さんのエビフライ1匹を交換した。


「え、1個でいいですよ」

「いやいや、釣り合わないだろ」

「いいんですよ。私はいつも食べてますから、久遠さんが味わってください」

「でも・・・・・・」

「いいから、久遠さんが食べてください」

「じゃあ、遠慮なく、もらうぞ?」

「どうぞ。遠慮しないでください」

「ありがとう」


 東雲さんに唐揚げを1個渡して、その代わりにエビフライが1本もらった。

 早速、そのエビフライを食べる。 

 衣はサクサクで、エビはプリプリしてて、エビフライも美味しかった。

 2人で昼食を楽しみカフェを出た。


「次はどこに行きましょうか?」

「本当に、行きたいとこはないのか?」

「うーん。そうですね。本屋さんくらいですかね」

「へぇー。東雲さんも本読むんだ」

「それなりに読みますよ」

「じゃあ、本屋さんに行くか」

「ですね。そうしましょう!」

「東雲さんの行きつけのカフェに連れて行ってくれたから、今度は俺の行きつけの本屋さんに案内するよ」

「本当に!?それは、楽しみ!」


 パァーッと顔が明るくなり、東雲さんは小さく飛び跳ねた。

 無邪気かよ!?可愛すぎるな!?


「それにしても、まだ、慣れてない感じだな。タメ口」

「まだ慣れない・・・・・・です」

「まぁ、東雲さんの楽な方で話してくれたらいいぞ」

「でも、久遠さんはタメ口の方が楽なんでしょう?」

「まぁな、でもどっちでもいいよ」

「分かりました。好きな方にします」

「うん。じゃあ、行くか」

「はい」


 カフェを後にし、俺の行きつけの本屋に向かった。

 少し離れてるから歩くことになるが、食後の運動だと思えば、ちょうどいいだろう。

 25分くらい歩いて、本屋さんに到着した。

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