第18話

「それで、どこに行くんだ?」

「そうですね。どこに行きましょうか?」

「決めてないのかよ」

「てへっ」

「てへっじゃない。まったく、東雲さんが行きたいところがあるって言ったから来たのに」

「だって、久遠さんとデートしたかっただけなんですもん!」


 なにそれ!?

 嬉しすぎるんだが!?

 ダメだ……可愛すぎて惚れる。

 とりあえず、俺たちは目的もなくぶらぶらと歩くことにした。

 

「東雲さんはこの辺はよく来るの?」

「そうですね。家が近くなので、結構来ますね」

「へぇー。東雲さんはこの辺に住んでるんだな」

「そうだ!何なら、私の家に来ますか?」

「遠慮しときます」

「何でですか!?いいじゃないですか、行きましょうよ!」

「危なそうな匂いがするのでやめとく」

「なんですかそれ!?」

「なんとなく、勘」

「ひどいですぅ~」


 そう言って、東雲さんは悲しそうな顔をした。

 そんな顔されても、行かないぞ。俺は……。

 いや、そこはチャンスだろ、と思うかもしれないが、さすがに、付き合ってもない女性の家に行く勇気はなかった。


「それより、お腹すかない?」

「話逸らそうとしましたね。確かに空きましたけど」

「じゃあ、どこかカフェにでも入ろう」

「あ、それならいいとこがあります!」

「じゃあ、そこに行こう」

「はい!案内は任せてください!」

 

 どうやらうまく話を変えれたみたいだ。

 東雲さんは上機嫌にカフェに案内してくれた。

「ここ、私の行きつけなんです」

「へぇー。オシャレだね」

「ですよね!」

 

 自分の行きつけのカフェが褒められて嬉しかったのか東雲さんは中に入ってからも上機嫌だった。

 そのせいか、いつの間にか俺に対してタメ口になっていた。

 

「東雲さんのおすすめは?」

「私のおすすめはね~。やっぱり、これかな」

「唐揚げ定食かー。カフェなのに定食があるんだな」

「ね、面白いよね!」

「じゃあ、それにしようかな」

「私はエビフライ定食にするから、半分こしない?」

「いいよ」

「やった!」


 それが、面白くて、笑ってしまった。


「何で笑ってるんですか?」

「あ、敬語に戻った」

「え……」

「気づいてなかった?さっきまで東雲さん、タメ口だったよ」

「ご、ごめんなさい」

「別にいいよ。というか、同い年で敬語ってなんかむず痒い」

「タメ口の方がいいってことですか?」

「その方が楽かな」

「じゃあ、そうする」

「うん、そうして」

「わ、分かった」


 まだぎこちないがそのうち慣れてくるだろう。

 俺は店員さんを呼んで二人分の注文をした。

 俺たちは雑談をしながら、料理が来るのを待った。

 


 

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