第2話 真田一
あの裏垢を見つけてから何日かが経過した。あの後、別の題材となりそうな裏垢を見つけた真は例の女子高生のことをすっかりと頭の片隅へと追いやっていた。
「ふぁ〜。眠い」
大きな欠伸をして俺は目を擦りながらノートにペンを走らせていた。
昨夜、遅くまでゲーム友達とゲームをしていて課題をやるのを忘れていた。
「よー。
「おはよう。
「なんだ? 朝から書いてんのか?」
「ちげぇよ。課題やるの忘れてたんだよ」
なんだつまんねぇの、と
さらに言うと一は高校生プロゲーマーでその腕前は世界一を獲るほどで、多種多様なゲームをこなす。昨夜も一と一緒にFPSのゲームをしていたのだが、何回やっても一が一位を獲り続けた。
そんな一に秘密を知られたのは去年の今頃だった。まだ入学したてで友達のいなかった俺に一番最初に声をかけてきたのが一だった。一緒にゲームをしている時にうっかりと口を滑らせてしまったのだ。
「お前からはゲームの匂いがする」
そんな一の第一声に俺は目を丸くした。
その時のことは今でもよく覚えている。
「お前、ゲーマーだろ?」
「・・・・・・」
図星をつかれて俺は何も言い返せなかった。
そんな俺の心を読んだのか一は嬉しそうに笑って言った。
「なぁ、よかったら俺と友達にならねぇ? そして、今日一緒にゲームしようぜ!」
あっという間に俺の懐に飛び込んできた一は屈託のない笑みを浮かべてスマホを俺に向けて差し出した。
断る理由もなかった俺は一と連絡先を交換した。そして、その日の夜、本当に一緒にゲームをして一気に友達としての距離が縮まった。
その時のことを思い出して、俺は懐かしくて頬を緩めた。
「そんなに笑ってどうした?」
「いや、ちょっと昔のことをな・・・・・・一が初めて俺に声をかけてきてくれた時のことを思い出してな」
「あぁ、懐かしいな。あの時だよな。たしか、真がかん・・・・・・」
「おい。それ以上言うな」
「おっと、そうだった」
すまん、と一は口を閉じた。
一はすぐに口を閉じてくれたが、一応教室内を見渡した。
幸いにも俺たちのことを見ている生徒はいなかった。
「また、新作かけたら読ませてくれよな」
「その時は教えるから買ってくれ」
「ちゃっかりしてんな」
「お金は大事だからな」
「それもそうだな」
一は俺に手を振ると別の生徒のところへと向かった。
その誰の懐にでも飛び込んでいく性格で一は友達がたくさんいた。それなのに、ゲームをするのは俺とだけって言うんだから、俺はできた友達を持ったものだと思いながら、数学の課題を終わらせた。
☆☆☆
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