第24話

 料理が運ばれてきても俺たちの討論はやむことはなかった。


「だから、このシーンはもっとエロくないと……」

「そうですか?このくらいでちょうどいいと思うんですけど……」

「ダメよ。もっと抽象的に隠語をたくさん使って……」


 こんなオシャレなカフェでどんな話をしてんだって感じだけど、これが俺と文乃さんのいつもの感じだった。

 文乃さんは仕事のスイッチが入ると、恥じらいというものが無くなるらしく言いにくいことでもズバズバと言ってくる。まだ高校生の俺はたまにその言葉を聞いて顔が赤くなることがある。

 それも、いつものことだった。そして、そんな俺を文乃さんが煽ってくるのもいつものことだ。


「あれ~。もしかして、経験がないから書けないのかな~」

「そ、そうですよ!悪いですか!?」

「私とする?」


 妖艶に口角を上げて、少し上目遣いで俺にそう言ってきた文乃さん。


「だから、いつも言ってますけど、そういう冗談はやめてください!」

「あはは、相変わらず真君は可愛いな~」

 

 最後は俺が照れて、文乃さんの仕事モードはオフとなる。


「で、どうですか?新作……」

「そうね~。率直に言うと、あんまり面白くはないわね」

「ですよね。自分でもそう思います」

 

 激しい言い合いをしていても、今書いている小説は自分の中であんまり手ごたえはなかった。

 

「実はもう一つ案があるんですけど……」

「お!そうなの?そっちはどんな話なの?」


 俺は頭の中にある、例の裏垢を基にした話を文乃さんに話した。もちろん、その裏垢の主が東雲さんかもしれないということは隠して……。


「なるほどねー。それは頑張って、その子を見つけないとだねー」

「目星はなんとなく、ついてます」

「そうなんだー。私にできることなら何でも言ってね。協力するからねー」

「ありがとうございます」


 きっと、文乃さんの助けは必要になるだろう。

 というか、文乃さんがいれば、分かるんじゃね?

 まずは、文乃さんと東雲さんを合わせるところからだな。


「私も真君を応援してる一人なんだからね!そのことを忘れないでね」


 文乃さんはそう言って俺に向けてウインクをした。

 そんなの分かってますよ。文乃さんがいなかったら、俺はここまで来れてはいなかっただろうし、あの小説だって生まれなかった。


「その期待に応えれるように頑張ります」

「その意気だ!さて、ご飯食べよっか?」

「ですね。すっかりと、冷めてしまってますね」

「あはは、だね~。でも、大丈夫。ここのは冷めても美味しいから」


 その文乃さんの言葉の通り、すっかりと冷めてしまったハンバーグは美味しかった。

 

☆☆☆

次回更新18時!

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