第1章 現代の絶世の美女の変化

第11話 久しぶりの学校

 俺のペンネームは「久遠真くおんまこと」。

 実際の名前がペンネームぽかったから、読み方だけ変えた。

 もちろん、学校のやつらにバレる心配はあった。それでも、いいペンネームが思いつかなかったので、というか、何でもよかったので本名をそのまま使った。

 バレたらバレただと、もう開きなおってるからあまり気にしていなかった。

 

「まぁ、そうそういないだろうけどな」


 なにしろ、俺の高校は生徒数が多くクラスが八クラスある。

 地元でも屈指のマンモス校だった。

 俺の小説を読んでる生徒はまぁせいぜいいても1人か2人くらいだろう。その内の1人ははじめだな。

 

「それしても、テンション上がるな」


 俺は久しぶりの制服に袖を通してテンションが上がっていた。

 その上、来週は久しぶりに文乃さんとの打ち合わせがあり、俺のテンションはさらに高い。

 文乃さんは俺の担当編集者さんだ。

 東雲さんに引けを取らないくらいの美人で大人の色気のある人。

 文乃さんのアドバイスはいつも的確で、俺では考えつかないようなアイデアをたまに出してくれたりする。

 とにかく気さくな人で俺とは友達みたいな感覚で馴れ馴れしく接してくれるから、こっちとしても大変助かっていた。

 大人の女性ってだけで少し萎縮してしまうからな。さらに、美人ってのが上乗せされた文乃さんとは、初めて顔合わせをした時はガチガチに緊張して、ほとんど話すことが出来なかった。


「懐かしいな〜」


 あれから、もう一年が経つのか。

 つまり、俺が作家になってもうすぐ1年になるということだ。

 1年の間で結構いろんな話を書かせてもらったな。あの1作以外はどれも駄作だったけど。いい経験をさせてもらっていると思っている。これから、もっといい話を書けるようななりたいな。

 まぁ、あのジャンルでいい話ってのはちょっと違う感じもするけどな。

 

しん〜。ご飯できてるわよ!」

「はーい。今行く」


 リビングから母さんの元気な声が聞こえてきた。

 母さんの手料理も久しぶりだな。

 俺はカバンを持ってリビングに向かった。


「おはよう、母さん」

「おはよう、真。なんで、もう制服着てるのよ」


 母さんは俺の制服姿を見て、おかしそうに笑った。


「いつもはご飯食べてから着るくせに」

「なんだか、久しぶりの学校で居ても立っても居られなくてさ」

「学校に行くのが楽しいっていいことね!なら、さっさとご飯食べて、学校に行ってらっしゃい」

「だね。いただきます」


 母さんのご飯は安定して美味しい。

 いつもあった日常が突然失われて、初めて気づくことってあるよな。

 母さんの美味しいご飯が毎日食べれることにちゃんと感謝しないとな。

 卵焼きが絶品に美味い。


「母さん、いつもありがとうな」

「どうしたの改まって」

「幸せだなっと思ってな」

「私も幸せよ。息子がちゃんと元気で戻ってきてくれて。ごめんね、一回しかお見舞いに行ってあげれなくて。仕事忙しくて・・・・・・」

「大丈夫だよ。母さんが俺のために頑張ってくれてるのは知ってるから。でも、無理はするなよ」

「はいはい。分かってるわよ。あんたみたいに骨折ったりしないわよ」

「言ったなー」


 俺は頬を膨らませてそっぽを向いた。

 母さんにこうやってからかわれるのも久しぶりだな。

 

「ごちそうさまでした」

「あんたは美味しそうにご飯食べてくれるから、作りがいがあるわ。お粗末様」


 母さんと一緒に食べ終わったお皿をキッチンに持っていき、自分の分を洗った。

 

「じゃあ、俺は学校に行ってくるよ」

「気をつけてね」


 家を出て学校に向かう。

 自分の足で歩けるってのはありがたいことだな。

 久しぶりに歩く学校までの道のりを俺は楽しみながら、学校に向かった。

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