第12話
「よー。真。久しぶりだな」
「おー。誰かと思えば、お見舞いに一度も来なかった一じゃないか」
「悪かったって、埋め合わせはちゃんとするから」
教室に入ると、高校生プロゲーマーの一が声をかけてきた。
1か月ぶりに見た一は、少し痩せているように見えた。
「お前、ちゃんとご飯食べてるのか?」
「やっぱり、お前もそう思うか?」
「ああ、げっそりしているように見えるな」
「雪奈にも同じこと言われてな。弁当を持たされた」
「いいことじゃないか。愛されてるな」
「まぁな」
雪奈とは一の彼女のことだ。
本名は
一とは一年生の時から付き合っていて、一年生の時に同じクラスだった俺とも仲がいい。
「で、どうだったんだ?大会の方は?」
「それを俺に聞くのか?」
「そうだな。愚問だったな」
一のゲームの腕前は俺が一番知っている。
結果は聞かなくても分かった。一は優勝したらしい。
「ところで、気づいてるか?」
「あぁ、気づいてる」
「お前、何かしたのか?」
何かをしたといえば、何かをした、というかされたな。
お見舞いに毎日来てくれたな……。
「真と話したいんじゃないのか」
「俺は学校ではあんまり目立ちたくないんだがな」
東雲さんと話したらまず間違えなく目立つ。
「学年1位が何を言うか。真はもう有名人だって!」
「マジか?」
「大マジだ。で、どうする?俺はいなくなった方がいいか?」
「そう、だな」
「じゃあ、またな。せいぜい虜にならないように気をつけろよ」
一もあの噂を知っているらしい。
虜か……。あの日以来、東雲さんに対して、少し心が揺らいでいることは一には黙っておこう。
一は、頑張れ、と言い残すとほかの友達のとこへ行った。
「さて、頑張りますか」
俺は東雲さんの方を見た。
すると、東雲さんの顔に花が咲いた。
スッと立ち上がって俺の方に向かってくる。
「安静にしていたみたいですね」
「まぁな」
「よかったです。ところで、あの……」
「ん?」
「今日のお昼ご飯一緒に食べませんか?」
「今、なんと?」
「だから、一緒にお昼ご飯食べたい、と言ったんです!」
東雲さんは顔を赤くしてそう言った。
その声があまりにも大きくてクラスメイトが一斉に俺たちに視線を向けた。その中にはもちろん一の視線もあり、そちらを向くと口パクで、頑張れよ、と言っていた。
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