第22話

 本屋さんを出ると外はすっかりとオレンジ色になっていた。


「もうこんな時間か」

「そうですね。そろそろ、お開きにしましょうか」

「満足したか?」

「はい!大満足です!」

「そりゃあ、よかった」


 まさか、東雲さんのファンだったとは・・・・・・。それも超がつくほどの、だ。

 全くもって予想外の展開に俺としては、明日から東雲さんとどう接していいか迷う1日となった。

 まぁ、東雲さんが楽しんでくれたなら、なによりだな。


「それじゃあ、帰るか」

「ですね。帰りましょうか」


 2人で並んで来た道を歩いて帰る。

 待ち合わせ場所に到着する頃には、あたりはすっかりと暗くなっていた。


「東雲さんの家はこの近く?」

「どうしたのですか?もしかして、私の家に来たくなりましたか?」

「いや、そうじゃなくて!?」

「うふふ、分かってますよ。久遠さんが紳士なことくらい。そうですね。20分くらいかな」

「20分か。割と歩くな。送ってくよ」

「え、いいですよ、1人で帰れますよ?」

「まぁ、そうなんだろうけどな」


 朝のあれを見たら心配なんだよな。

 いつも1人で帰ってるだろうから大丈夫なんだろうけど。


「そんなに、まだ私と一緒にいたいのですね。仕方ないですね〜。ここは、久遠さんのお言葉に甘えて、送ってもらいましょうかね」

「べ、別に俺はまだ東雲さんと一緒にいたいとか、そういうのじゃなくて・・・・・・」

「分かってますって。心配してくれてるんでしょ?」

「そうだよ。悪いかよ」

「いえ、むしろ嬉しいですよ」


 東雲さんはニコッと笑って、右手を差し出してきた。


「この手は?」

「エスコートしてください!」

「俺、東雲さんの家をしらないけど?」

「そこは、私がエスコートしますから」

「なんだそれ」


 俺は東雲さんの手を取った。


「じゃあ、行きますか」


 東雲さんのエスコートのもと東雲さんの家に向かうことに。

 

「てか、暗くね?」

「ですね」

「ですねって、この辺あんまり街灯ないんだな」

「まぁ、でも大丈夫ですよ。普段はこんな夜遅く歩くことはありませんし」

「そうなのか?」

「はい。久遠さんは夜遅く出歩くので?」

「いやまぁ、俺もそんなにはないけど」

「でしょう。だから、大丈夫です」


 東雲さんにエスコートされた道はあまり街灯のない薄暗い道だった。

 送る選択をして正解だったなと思った。

 こんなに暗いとは思ってなかったけどな・・・・・・。


「着きました。ここが、私の家です」

「大きいなぁ・・・・・・」


 一体何回層あるんだ・・・・・・。

 俺は目の前に聳え立っているマンションを見上げた。

 さすが東雲グループの御令嬢だ・・・・・・。


「久遠さん。せっかくだから、家に上がって行きませんか?お茶くらいしかお出しできませんけど」

「悪い。母さんがご飯作って待ってくれてると思うから、帰らないと」

「そうですか。分かりました。ご家族は大事ですからね」


 そう言った東雲さんの顔に少し陰りが浮かんだように見えたが、数秒後にはいつもの東雲さんに戻っていた。

  

「では、送っていただきありがとうございました」

「どういたしまして」

「また、学校でお会いしましょう」

「あぁ、またな」


 東雲さんは俺に手を振るとマンションの中へと入って行った。

 

「さて、俺も帰るか。帰ったら、母さんに問い詰められそうだな」


 東雲さんの姿が見えなくなると、俺は歩き出した。

 10分くらい歩いたところで、スマホが振動した。画面には東雲さんからのメッセージが表示されている。


『今日はありがとうございました。とても楽しかったです。家まで送っていただいたお礼に、小説の参考にでもしてください』


 そして、1枚の画像。

 水色のワンピースの裾を最大限に捲し上げ、透き通るような真っ白な足とチラッと見えてる真っ赤な色。


「なんて写真送ってきてんだよーーー!」


 俺がそう叫んだ声は静観な住宅街に響き渡った。


☆☆☆

次回更新6/23(水)


さぁ、少しずつ明らかになってきましたね😏

これからもお楽しみに✨

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