第3話 救済国メシアライブ
目が覚めると知らない天井、小さな部屋。
ベッドの上で寝ていたので起き上がり部屋を見回すがサービングテーブルに鏡、イスなどがあるだけで、自分以外の人の姿は見当たらない。
そばにたてかけられた鏡をみると、鏡にうつったのは現実世界の冴えない安田翔の姿ではなかった。
現実世界の安田翔とは似ても似つかぬ好青年の姿が鏡にうつっている。
なかなかのイケメンだ。
不思議な神殿での出来事や安田翔の記憶が残っている。
神殿で語られたとおりだとすれば、ここはゲームの中であり、ダイオアデッド最終イベントの世界のようだ。しかしここは知らない場所だ。自分の知るやりこんだダイオアデッドのゲームの知識がこの世界で役に立つかどうかはまだわからない。
この世界のことは ダイオアデッド最終イベント世界 と名付けよう。
(最終イベント前に長年プレイしていたダイオアデッドのゲームのことは 長年プレイしていたゲーム もしくは簡略化して ゲーム と表記する。)
そういえば、なすべきことをなせと言われたがよく聞き取れなかった。
ゲーム同様、このダイオアデッド最終イベント世界でも魔王を倒しクリアすればいいのだろうか。
不思議な力を感じる。スキルや魔法を使うことができるみたいだ。
自分のステータスも確かめることができる。
名前は エンネア・ゼロ 職業はマジックキャスター、マジックキャスターは最上級の職業で魔法詠唱者という意味だ。攻撃魔法、召喚魔法、精神に作用する魔法等他にも多くの魔法を使える。ただし魔法を使うとMPを消費する、一般的には強力な魔法ほど多くのMPを消費するのでMPの枯渇に注意しなければいけない。
レベル、ステータス、スキルや魔法、持ち物、所持金、装備品等の確認を一通り行う。
おおむね知ってるゲームのままだが違う部分もいくつか見受けられる。
レベルとステータスについてだが
長年プレイしていたゲームではレベルの最大値は100
HPの上限999
MPの上限999
力(物理攻撃力に影響)
魔力(魔法全般に影響)
素早さ(命中、回避に影響)
器用さ(命中、回避、生産や付与など戦闘以外にも影響)
運(さまざまな事柄に影響)
などのステータスは上限が255だったはず。
今表示されているステータスはレベル100
知ってる部分と大きく違うのはHPとMPと魔力が9999と表示されている。
HPMP魔力以外のステータス、つまり力、素早さ、器用さ、運は3桁の値が表示されている
HP MP 魔力が9999って・・バグか?
職業はマジックキャスターだったな。
マジックキャスターという職は長年プレイしていたゲームにはなかった。
特別な職のようだ。
ステータスには カルマ値 というものもある。
-255~0~+255の範囲があり
わかりやすくいうと悪い行いや良い行いを数値化したものだ。
マイナス255に近づくほど悪、プラス255に近づくほど善良な性質をもつ
-81から-255の間の数値だとChaos(カオス 混沌)属性
-80から+80の間の数値だとNeutral(ニュートラル 中立)属性
+81~+255の間の数値だとCosmos(コスモス 秩序や調和)属性となる
これが影響するのは召喚魔法を使うときで召喚者と召喚されたものの属性が一致してはじめて、召喚されたものは本来の能力を発揮できる。
属性が一致していなくても召喚はできるのだが、召喚されたものはレベル制限能力制限などのペナルティ(不利益)をくらう。
例をあげると召喚者がカオス属性なのに天使(コスモス属性)を呼ぶと、その呼び出された天使は非常に弱い状態で召喚されるということだ。(極端にいうとステータスオール1とかそんな感じである)
召喚魔法は基本的に召喚者と召喚されるものの属性を一致させる必要があるということだ。
長年プレイしていたゲームではカルマ値については単純な善悪だけの意味にとどまらない。理不尽に思うことも多々あった。
基本的には良いことをすればプラスに傾くが、敵だからといって自分より弱いモンスターを大量に倒すとマイナスに傾くこともある。
人を殺す場合、悪人だから殺してもかまわないと思い殺すとカオス側に一気に傾く場合もあるという具合だ。
ゲームにおいて善、悪の基準は様々で単純なものではないのだ。
カルマ値を気にするか、気にしないかは人それぞれだろう。
「ゲームの中くらいは好きにさせてもらおう」
なおカルマ値はプレイヤーの行動後即時に数値が反映されるのではなく、一定の期間にプレイヤーがどのような行動をとったかその一定期間中の数値変動が合算され、カオス、ニュートラル、コスモスのいずれかの属性が決まる。
属性が決まるのは月曜日の0時。ゲームの世界一周間分の行動が月曜日の0時に反映され属性が決まるということだ。
ゲームでは冒険者ギルドで冒険者登録をして数々のクエストをクリアすることで与えられる 冒険者ランク が強さの目安となっていた。
一般的に他人のステータスの詳細を知ることはできないシステムだ。
このダイオアデッド最終イベント世界でも同じシステムなら 他人に私のHPMP魔力の数値が9999ある ことは知られない。
バグなのか念のため詳細をたずねようとゲームマスター運営関係者をコールしたが反応が無い。ログアウトもできない。
このまま進めるしかない。
スペースストレージの魔法を発動
「スペースストレージ」 と唱える(もしくは念じる)ことで空中に謎の黒い空間があらわれた。
この中に持ち物を保管することができる。中に手をいれると中に収納されているものが直感的にわかり任意のものを取り出すことができる。これは便利だ。これから多用することになるだろう。ゲームをやり込んだだけあって装備やアイテムはレアなものがたくさん収納されている。所持ゴールドも十分ある。
どうやら装備やアイテム、ゴールドは最終イベント直前のゲームのものがほとんど引き継がれているようだ。
ただしストーリー進行上の重要なキーとなるもの等は引き継がれていない。
あらかじめよく使うアイテムや魔法、スキルはショートカットに登録して使用することが可能だ。
ダイオアデッド最終イベント世界のことはまだよくわからない。
ゲームのRPGなどでラスボスを倒してクリア後に強くてニューゲームでいろいろ引き継ぎ、また最初からプレイというのがある。
いわば引き継ぎ有りでいろいろ新たに知らないイベント、敵、マップ等が追加された2周目をプレイする、そんな感じではないだろうか。
いきなり知らない場所から始まったので、単なる推測でしかないのだが・・
窓から外を眺めてみると、草原、墓地、海や山が見える。少し離れたところに街も。
この部屋には扉が一つ、この部屋から廊下に続くと思われる扉のドアノブに手をかけようとした。しかし状況がわからない以上安易な行動は慎むべきだと思いなおし、ベッドに戻り今後について思案する。
異国の知らない土地で活動する上で一番困るのは言葉の壁だ。
このダイオアデッド最終イベント世界の住人の言語を理解、読み書き等も可能にしておかなくては。人間族の言葉全翻訳
これで人と話すことや読み書きもでき意思疎通が可能になったはずだ。
ここがどこかわからないことには始まらないな。
ステータスにはニュートラル属性と表記されている。
・・ものは試しだ。カオス属性のゴーストを呼び出してみるか。
MPを消費してゴーストを召喚 見つかりにくい特性を持つ。
術者を中心に一定の短い距離を移動できる。わずかに浮遊が可能、遅い速度でしか動けない、壁のすりぬけに回数制限がある等色々制限がある。
ゴーストは非常に弱い状態のため敵モンスターがいれば返り討ちにあうだろう。
(建物の造りからモンスターが私を助けてくれたとは考えにくい。未知の世界なので断定はできないが)
「相手に気づかれないようにこの建物を偵察してこい」
ゴーストはうなずき偵察に向かう。しばらくのちゴーストが偵察を終えエンネア・ゼロに報告する。
「なるほどここは小さな教会ということか 神父とシスターがいるのか ご苦労」
役目を終えたゴーストは消滅する。
しばらくしてシスターが容体を見に部屋を訪れる。
「お目覚めになりましたか、まずは自己紹介から私の名前はコレット・シアン。
今はシスターとしてここで活動をさせていただいております。
ここは救済国メシアライブの北の方にある北メシアという街のはずれにある教会です。あなたが浜辺で倒れていたのでここへお連れした次第です」
「私の名前はエンネア・ゼロ 記憶があいまいで思い出せないことも多いのだが、こことは違う遠い地からやってきた」
「そうでしたか 嵐の夜の翌日に浜辺で倒れてました。異国の方でも言葉が通じるようで良かった」
グー! お腹の鳴る音が響き渡る。
「食事の準備をして持ってきますので少しお待ちください」
「どうぞ」
「ありがとう、いただきます」
硬いパンと薄味のスープをいただいた。
(パンがかたすぎるしパサパサだ、ぜいたくは言えないが美味しくない・・)
食べ終え落ち着いたところでこの世界のことを知るため神父やシスターと話をすることに。
「ここ北メシアの街周辺ではゴブリンがあらわれ人々をおびやかしています。
ゴブリンは群れをなすことが多く街の自衛団も手をやいています」
「数が多い場合街の自衛団だけでなく、冒険者もゴブリン討伐に参加します」
どうやら冒険者も討伐に参加しているようだ。
(私も討伐に参加するべきか。いや待てよ。自分がモンスターに殺された場合どうなるのか、ゲームでは死んでも復活もしくは一定のセーブポイントからやり直しできた。
だがこのダイオアデッド最終イベント世界では死んだら終わりゲームオーバーかもしれないぞ)
「変なことを聞きますがモンスターに殺された場合どうなりますか?教会、神父様の力で復活とかできますか?」
神父は静かに言った「教会、神父の力で復活などはできません。命あるもの、亡くなった場合は天に召されるのが理ですよ」
「そう・・ですよね。ハハハ・・」
(ゲームと違い復活はできないということか?実際に死んでみないと断定できないが復活が無い場合のことを考えると、死ぬことはできない。
魔法陣のあった場所で受けた説明では現実の私は仮死状態であると言っていた。
この世界での死が現実世界の私の死につながるということも考えられる)
数日後、万全な状態になった私は、神父とシスターにお礼を述べ教会を去ることに。
このダイオアデッド最終イベント世界のことをもっと詳しく知らなければいけない。
情報収集のためにまずは冒険者ギルドに向かおう。
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