第25話 少女S

 階段の先にはワインセラーがあり、ワインが多数並んでいる。ガメツィは高級そうなワインを選び、ウキウキとした足取りで屋敷に戻る。

 ワインをたしなんだあと就寝するようだ。


(特に不審な点はない。金と権力に固執する典型的な権力者といったところか。これ以上ここにいても仕方ないのでそろそろ宿屋に戻るとしよう)

 そう考えた矢先、ガメツィは立ち上がり「アレを確認しておくか」とつぶやいた。


 屋敷の別館の立ち入り禁止と書かれた部屋に移動する。書棚をスライドさせ本に似せた入れ物からキーを取り出す。カーペットをめくり床にある鍵穴にキーを差し込むとスイッチがあらわれた。スイッチを押すと隠し階段が。ガメツィに続きエンネア・ゼロも階段を下りる。

 

 その先には厳重な扉がいくつもあり結界が施されている、更に進むと棺桶が置かれていた。ガメツィが棺桶のふたを開けるとヴァンパイアの少女が心臓に杭を打たれた状態で横たわっていた。棺桶の中にはたくさんの十字架が置かれている。


 「魔王が倒されたことで気になったが異常はないな、太陽の光を浴びても死なず教会の力をもってしても封印するのがやっとだった。しっかり管理しておかないと、さてと寝るとするか」

ガメツィは棺桶と扉を閉め階段を上り去ってしまった。


(こんなところにヴァンパイアの少女が封印されていたとは、特に問題は無さそうだしこのまま放置しても良さそうだが)

棺桶の蓋を開ける。指先を噛みちぎりヴァンパイアの少女の口元へ。指先から真っ赤な血がしたたる。ごくん。


 「ふぁ~~よく寝た。あなたは誰」棺桶の中から体を起こし伸びをしながら少女はたずねてきた。

「私の名前はエンネア・ゼロ、マジックキャスターだ」

「そう、ここはどこ」

「ここは大司教の屋敷の地下だ、少女よ、名前はなんというのだ」

「スカーレット・アルカード。ヴァンパイアよ」

見つめる少女。

「良い眼を持ってるわね。特別にスカーレットと呼んでいいわ、ちなみに緋色という意味よ」


 少女は心臓に打ち込まれた杭を引き抜き、棺桶から出て立ち上がる。

「心臓に杭を打ち込まれていたようだが、大丈夫なのか」

「ええ、戦うのがめんどくさくなって倒されたふりをしたら心臓に杭を打たれてここに運び込まれたわけ。存外静かだったからここで寝ていたの。心臓に杭を打たれても太陽の光を浴びても私は死なないわ。ま、血が必要だけどね。私に血を飲ませたのはあなたでしょ」

「そうだ」

「あなたの血は不思議な味がするわ」

にじり寄る少女


(サッと離れる)「これからどうするのだ」

「そうね。私はゲートの魔法でアルカード家の城に戻るわ、縁があったらまた会いましょう」

「ゲート」スカーレットは門をくぐり、しばらくすると門は消え去った。

 

 ヴァンパイアの少女は身長150cmくらい、衣装は黒色のゴシックアンドロリータで金髪で長め、緋色の目をしており顔も小柄で美形だった。人間でいうと14歳か15歳中学生くらいの少女だった。

 

宿屋へ「テレポーテーション」


 エンネア・ゼロは宿屋に戻り軽食を取ったあとフレイ・ミルフィーユを自室に招き話す。

「いかがでしたか」

「呪いを解いてもらう交渉は済ませてきた」

「交渉がうまくいって良かったです」

「ああ、あとはきちんと解呪してもらえるかどうかだが教会の信用に関わることだ、さすがにきっちり解呪してもらえるだろう」


「今後の方針はいかがいたしますか」

「そうだなのんびりしたい。ピクニックに行こう」



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