27話 解呪
クルス・リンシーの解呪が行われる日が訪れた。
解呪は大聖堂別館の高度治療室で行われることになった。
聖女の乗った馬車が到着する。聖女と聖女を護衛する者は別館へ。建物の周りは衛兵がしっかり守りを固めている。
クルス・リンシーと付き添いのエンネア・ゼロはすでに高度治療室手前の待機部屋で待機済みだ。
「私は信心深い方では無いので初めて訪れたのですがやはり神々しさを感じるわね、あとで大聖堂の方も見学させてもらおうかしら」
「それなら私も見学させてもらおう」
「聖女様か、きっと素敵な方なのでしょうね」
(目を泳がせながら)
「ああ、神に対し敬虔(けいけん)な祈りを捧(ささ)げると聞く。信心深く慎ましやかな方なのだろう」(実際は見た目地味でモブっぽくて慎ましいどころかすごい皮肉屋だがそんなことは言えない。ポーションの件は機密事項といっていい、誰が聞いているかわからない以上ここで話題にはできない)
他愛のない話をしていると聖女様が到着しお互い軽く挨拶をすませる。高度治療室へ案内される。
護衛役の私はここで待機するものとばかり思っていたが、どうやら高度治療室へ入室していいらしい。
(聖女様は危害を危惧している様子はない。信用されてるみたいだ。聖女自身の安全に関しては何かしら特別な装備や術が施してあるのだろうか、こうなるとスリップを唱えたい衝動に駆られるがさすがにTPOをわきまえ我慢する)
解呪とやらがどうやって行われるのか興味があるので見学させてもらうことに。
患者はベッドの上で仰向けになり、聖女様におもむろにめくられる。呪われた患部があらわになる。
「この呪いは時間経過により死に至る呪いです。すぐに死ぬわけではありませんが恐ろしい呪いには違いありません」
これより行う解呪は少し時間がかかります。
聖女は目をつむり祈りのポーズをとる、時間の経過とともに聖なる力が徐々に高まっていく。
「悪しき呪いよ聖なる力により滅びなさい、元凶よ退け」
「ディスペル」
詠唱が終わり魔法が発動する。まばゆい光が部屋全体を包む。
死兆星の呪いは浄化され跡は消滅した。
(これがディスペルか、弱い呪いであれば他の神官などでも解呪できるようだが今回の呪いはより高位の呪いであり聖女の力が必要だった)
「呪いの解除に成功しました」
「聖女様ありがとうございました。晴れやかな気分です」「ありがとうございました」
「このあと少し大聖堂の方を自由見学させてもらってもよろしいでしょうか」「ええ、どうぞ」
挨拶を済ませ治療室から出たあと、聖女は背を向け立ち去ろうとする。
(今だ!)聖女に対し小声で「スリップ」を唱える。
ツルン、ドテッ
転んで尻もちをついたのはクルス・リンシーだった。聖女は何ともない。
聖女は振り返り近づいてきて「大丈夫ですか」と声をかける。
「ええ大丈夫です」と言いながら立ち上がる。
その後大聖堂を見学し二人は帰路につく。「大聖堂想像以上の造りだったわ、今回の解呪の件本当にありがとう。大きな借りができたわね」
「気にしなくていい。治したのは聖女様なのだから」
「あなたってすごい逸物(いちもつ)よね」
(……)
(……)
「もう!すごくすぐれた人物って意味よ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます