28話 見破る力

宿屋の一室

 解呪後、帰り際の出来事を振り返る。


(聖女にかけたスリップの魔法、効かなかったどころか反射されたように見受けられた。

 反射の魔法といえばリフレクトだが、聖女がリフレクトの魔法を唱えたのであればスリップは詠唱した私に反射されるはずなので、リフレクトではない。反射ではないのか?

 

 反射ではないとなると対象者を入れ替えるスキル、誤認させるという意味では幻術、暗示の類か。聖女にスリップをかけたつもりがクルス・リンシーにスリップをかけていたということだ。

 心当たりが一つある。聖女がクルス・リンシーの呪い解除の件でガメツィと話すため執務室にきたとき皮肉交じりのあいさつをかわしたあと、私は魔法によりアンノウンの状態だったがチラッと聖女と目があい微笑まれた。あのときに幻術、暗示をかけられた可能性が高い。

 魔法によるアンノウンの状態は視覚、聴覚、嗅覚などで感知されなくなるのだが、自身の存在が無に近づくという観点からアンノウンの状態では自身の装備効果やチート能力も一時的に全て無効になるのかもしれない。

 アンノウンの魔法はゲームには無かった。自分にしか使えない未知の、解明されていない魔法だ。視覚、聴覚、嗅覚で感知されないとしか魔法の説明欄には載っていない。弱点デメリットなどについては説明がない。


 アンノウンの状態は私も自分自身の姿を確認することができない(鏡に映らないし自分の影もできない)、装備は外れていないが能力としては裸で出歩いてるような状態だったということだ。

 アンノウンの魔法が見破られたのは初めてで、ニーベルンゲンの指輪の全状態異常無効の効果も無くなっていたことになる。


 それで何らかの幻術、暗示をかけられたということか。アンノウンを見破られて初めて重大な欠点に気づかされた。

 においだけを消す、姿だけを消す、足音などの音だけを消す魔法というのは基本職の魔法使いも使えるのだが、アンノウンの魔法はあまりにも隠密行動に優れているため過信しすぎた。

  

 アンノウンを見破る聖女の眼は魔眼に対し聖眼といったところか。

あのスマイル暗示をかける異能、いやもしかすると聖女は異世界からきたプレイヤーでワールドアイテムを使用し私に暗示をかけた可能性すらある。

 

 魔法陣のある神殿の女の人は最終イベント世界に参加できたのはエンネア・ゼロだけと言っていたので、聖女はプレイヤーではないはずだが。

 やはり聖女本人から話を聞かないとわからないな。これ以上考えても仕方がない。


とりあえず自分にかかっていると思われる幻術、暗示を解く必要がある)

ワールドアイテム 真エリクサーを飲む。状態が完治した。


 (アンノウン中は装備の効果やチート能力も無効。つまり聖女の聖眼で見破られたあとにデス(即死魔法)をかけられたら、即死や即死クラスのダメージを受けても1度だけHP1で生き残るという対策も効果が発動せずに私は即死していただろう。聖女は恐らくヒーラーなのでデスを唱えることはできないだろうが危険極まりない。

 アンノウンの魔法はほとんど存在を感知されないというメリットが大きい分、デメリットも大きいということだ。

 

 やっかいなのは執務室で聖女にアンノウンの状態を見破られたということを私自身その場ですぐに認識できなかったという点。アンノウンの状態は他人に見破られても即座にアンノウンの状態は解除されないということだ。


 アンノウンの魔法は一時封印して、もし隠密行動するのであれば今後は相手から視認できなくなるインビジブルの魔法を使うか。インビジブル中は装備効果が無効になったりしないが、音や匂いで存在がばれてしまう、どちらにしろ聖女相手には使えないか)


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ダイオアデッド 異世界転移ゲームの世界で超越します エンネア小説 @enneasyousetu

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