ダークファンタジーや復讐物と一言で形容するには勿体無い作品です。
冒頭、軽い舞台設定に触れつつ退廃的な美しさを感じさせる描写で少女の語りに移り、その直後一転して清々しい朝日のような「少女時代」を振り返ります。
未熟故に傲慢で、けれどそれ故に無邪気で希望に溢れる少女。
無鉄砲で、欲に忠実で、だけど心を砕く優しさを持ち合わせていて。
そんな彼女のくるくる変わる表情と心情の描写が繊細に描かれます。
出会う人との関わり、期待に満ちた旅路。冗長を嫌う人にとっても程よいテンポで読み進めたその先に待ち受ける展開から、一気に話がダーク方面へと舵を切るのは見事の一言に尽きました。
殺意に芽生えた少女の鬱くしさ、出会う人との多様な関係性。
何より、復讐相手の狂気が映える淡々とした美しい文体。
彼女の旅(復讐)の終着点を多くの人に見守ってほしいです。