第19話 氷の城3

 急いでフレイ・ミルフィーユのもとへ戻ると彼女はうつむいていた。「スペースストレージ」謎の黒い空間よりコートを取り出し彼女を羽織る。


 エンネア・ゼロに抱きつくフレイ・ミルフィーユ。あまりに大きくて柔らかい双丘(そうきゅう)が体に触れ、ドキッとしてしまう。

(あたってるんだが)


「逃・・げ・・」

「え?ス・・」

フレイ・ミルフィーユのスキル「抱合・・・」


(このスキルはまずい!)

「ストップ」

最上級を超える超級魔法。時間が停止する。止まった時の中を動けるのは詠唱者のみ。詠唱者以外は時間停止中のあらゆる動きを認識できない。(対策可能)


「危なかった。」

 (ゲームの記憶によるとフレイ・ミルフィーユの使おうとしたスキルの名は抱合い心中(だきあいしんじゅう)

 自らの命と引き換えに敵を倒す、効果範囲がせまいが強力なスキルだ。


(フレイ・ミルフィーユが格下のバイコーンに押し倒され襲われたり、何も話さないうちからお互い死ぬような技を使うわけがない。交渉を邪魔する黒幕がいるということになる)


 (間一髪回避できたが、まんまと罠にはまってしまったようだ。バイコーンが押し倒す場面から抱合い心中までの筋書きは恐らく魔王のものだろう。西マイクロメシアの戦いでフレイ・ミルフィーユが重症を負わず帰還したことや性格を読んだ上での仕掛け、私が逆上しバイコーンを倒しフレイ・ミルフィーユに近づくことまで見越してのことか)


 フレイ・ミルフィーユの顔を眺める。「涙の跡か」

 

 1週間前フレイ・ミルフィーユに初めて会って勝利したあと、どうしてそんなに人間を憎んでいるのかと問うと、

 「私は元は人間で貴族の令嬢だったが、両親が共に不倫で離婚、お前はいらないと言われ子供のときに両親に捨てられた。捨てられた場所が高位の魔族の住む森で、力が欲しいと願い、悪魔と契約そして魔族となり、最終的に魔王に仕えるようになった」とフレイミルフィーユは答えたのだった。


 このままストップを解除しては抱合い心中が発動してしまう。

 私は即死クラスのダメージを受けても1度だけHP1で生き残るという対策をしている上に、ストップで時が止まっている今なら抱合い心中の効果範囲外に退避することができる。

 しかしスキルを使ったフレイ・ミルフィーユは確実に死んでしまう。

 

「助けたい、フレイ・ミルフィーユを助けなければならない」そう直感する。

 一番初めに魔法陣が描かれた神殿で、あなたにしかできないことを成し遂げてもらいますと言われた。そのことと関係しているに違いない。


「とっておきの超級魔法を発動させる!」


「超越」

最上級魔法を超える超級魔法を発動

過去、現在、未来を司る三女神の力を借りることで時を操る。(制限あり)

(私しか使えない超級魔法の中でも最高クラスの魔法だ、今回は過去の力を使う)


「過去へ飛ぶ」


  過去へ飛ぶについて

 ダイオアデッド最終イベント世界の中で時間が巻き戻るという形になる。(プレイヤーの記憶、エンネア・ゼロの記憶は引き継がれる)

 よって今の状態、(フレイ・ミルフィーユバッドエンド1)の世界は消滅してしまい、ここにはもう戻ってくることはできない。

 

「過去を変え新たな道を見つけ、フレイ・ミルフィーユを助けてみせる!」 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る