第5話 フスカの森1

 次はどのクエストを受けるか考えていると、冒険者ギルドの受付嬢からとある方からエンネア・ゼロ様名指しのクエストがあると言われ話を聞くため奥の応接室に。

 「依頼者様が誰かは明かせませんが、エンネア・ゼロ様にぜひやっていただきたいということでこちらが依頼内容です」

「依頼者の素性は教えてもらえないのか・・怪しいな」

「依頼者様の素性についてはエンネア・ゼロさまには明かせませんが、冒険者ギルド側ではしっかり身元を確認把握しております。信頼のおける方からの依頼ですのでご安心ください」

「なるほど」

「指名のクエストは国や要職に就く方からの依頼が多く、一般的なクエストよりも重要なクエストと思っていただければ結構です」

 内容を確認したところ銀ランクのクエストだ。

「重要なクエストと言われ更にわざわざ私を指名してきたのだ、受けることにしよう」

目的地 フスカの森 ゴーレムの討伐を受注した。

「依頼を受注していただけて良かったです」

「それではこちらも討伐の準備などがありますのでこれで」と一礼し応接室を退室する。

 (銀ランクのクエストか。ソロでいくかパーティーを組んで行くかの選択だが、今回はパーティーを組んでみよう。今後の旅に自由がきかなくなると面倒だし、パーティーを組むにしても今回のクエストだけの一時的なパーティーということを参加者に伝えておかなければいけないな。目的地が森となると素材採取クエストもできそうだし、教えてもらいたいこともある。できれば薬師をパーティーに誘いたい。)

 追加で素材採取クエストを受注した。

 薬師は薬、薬草などの知識が豊富な為パーティーにいると素材採取効率が上がる。また回復アイテムや戦闘中の一時的なステータス強化アイテムの効果を高める特性も持つ。戦闘力は低いため後衛でサポート役に徹することがほとんどだ。しびれ薬、毒薬などを使い戦う事も可能だが後衛向きの打たれ弱い職が前に出て戦うのはよろしくない。

 

 パーティーを組む場合、直接会って交渉するか、パーティー希望一覧からチャット、メッセージを飛ばして誘うことになる。この辺はよく知るダイオアデッドのゲームと同様のシステムだ。

銀ランク以上でパーティーを希望して仲間となってくれそうな人は・・パーティー希望一覧から探す。

 一覧の自己プロフィール、コメント欄を覗くと

・1流モンクの弟子の姉の彼氏の弟だ俺を誘わないともったいない、きっと後悔するぜ。

・従妹がオークに捕まってしまいました。一緒に討伐捕虜奪還に行ってくれる人募集。

・強パーティーから追放されました戦闘の役に立たない職ですが拾ってください。

・元貴族です、田舎でのんびり暮らしたい。そうだ田舎に行こう。田舎で搾取しよう。

・豪勢な暮らしがしたい、でも働きたくありません。お金持ちで養ってくれる人誘ってください。

・素質が無くアックスファイター(斧戦士)の親に勘当されたので、魔法の修行を積んで立派になり見返してやりたいです、協力してください。

・強い冒険者になって、女の子にもてたいという想いは誰にも負けません。一緒にもてもてになろうぜ。

・こちら女性です、女性の方誘ってください。女性以外、男はけがらわしいのでお断りします

・古参幼女です。

・あなたの恨み、はらします。あなたが討伐できなかったボスクエスト一緒にいきましょう。

・俺より弱い奴に会いに行く。弱い敵たくさん狩りにいこうぜ。この世界は弱肉強食だ


「自己プロフィール、コメント欄を見た感じ(頭おかしい)いろんな人がいるな。中には優れた人材もいると思うので、今度時間があるときに誘うのもいいかもな。」


「当面の目標だがまずは冒険者ランク金ランクを目指す。いずれ新ギルドを立ち上げることになった場合人材が必要となるだろう。玉石混淆(ぎょくせきこんこう)ダイヤの原石を見つけたいものだ。それとこの世界は食事があまり美味しくないな、できれば・・」

(あれこれ考えてしまうのは私の悪い癖だ。今は余計なことは考えずフスカの森のクエスト攻略のため薬師を探そう。)


・薬師のクルス・リンシーです。素材採取やレベルあげをかねてフスカの森に行きたいです。誘ってください。

うん、この人が良さそうだ。誘いのメッセージを送ろう。

「こんにちは 一緒にフスカの森 ゴーレムの討伐に行きませんか 今回のクエストのみのパーティということでよろしくおねがいします」

薬師クルス・リンシー 「はい素材採取クエストもかねてでよければ」

「もちろん 街の入り口で待ってます」

 冒険の準備を済ませ待ち合わせ場所で待つこと数分、クルス・リンシーが現れた。

簡単な挨拶を済ませ、街を出て目的地フスカの森に向かいながら、薬師は普段どんな生活をしているのか聞いてみると

 「薬師は広義の錬金術や魔術的な知識も多少持ち合わせていて、調合や実験のため研究室にこもったり、より高度な知識を求めて研究棟の特別書庫で調べ物をしたりするわ。

 作成したい薬の材料を材料屋で買って調合するより、自分でフィールドやダンジョンで材料を採取して調合する方が金銭面で安上がりで作成できるし、採取スキルを磨けるから私は採取クエストを積極的に受けるようにしてるわ。

 他の薬師は金銭面や採取スキルより調合スキルのレベル上げを優先してるのか採取をめんどくさがってお店で材料を買って調合することが多いみたい、すごい赤字だ!とぼやいているのをよく聞くわ」

 

 薬師クルス・リンシーは知性を備えた上に若くて美しい女性である。髪はさらさらのロングヘアー、これだけ長いと手入が大変に違いない。

 白いローブを羽織り、深みのあるグリーンのスカートはコクーンスカート。コクーンとは繭のことだ。繭のように丸いフォルムが特徴のスカートをはいている。

 女性に直接年齢を聞くわけにはいかないので推測するしかないが20代前半だろうか、金銭感覚もなかなかで浪費家ではないのがうかがえる。


 話しながら移動していると目的地のフスカの森に着いた。

 エンネア・ゼロ(ニュートラル属性)は犬型の魔獣ヘルハウンド(ニュートラル属性)を召喚した。黒い犬で警備犬ドーベルマンによく似ている。

 クルス・リンシーと私が採取を行ってる間モンスターからの奇襲、襲撃を受けないようヘルハウンドが警戒警護にあたる。

 「頼みがあるのだが、採取するにあたり通常のものと、より品質の高いものの見分け方を色々教えて欲しいのだがかまわないだろうか」

 「いいわよ」

「このキノコっぽいのは太い方が・・これは大きい方が・・これは硬い方が・・」

 しばらくの間森の中を歩き回りクルス・リンシーと一緒に素材採取を行う。


エンネア・ゼロ、クルス・リンシー(横にヘルハウンド)の順で採取しながら進んでいるとムービングツリーが後方から突如襲い掛かってきた。攻撃時のムービングツリーは幹に目や口のようなものが浮かび上がり森への侵入者に対し複数の葉を飛ばす攻撃を行う。攻撃時以外は普通の樹木と大差ないので発見が遅れがちだ。

 ムービングツリーのバックアタックによりクルス・リンシーは葉の攻撃を食らってしまう。

「キャッ」

「こっちへ、敵から距離をとれ」

 クルス・リンシーは若干裂傷をおいながらも敵と距離を取り、近くの木の幹に隠れ防御態勢をとり葉の攻撃を防ぐ。ヘルハウンドもクルス・リンシーのあとを追う。

 クルス・リンシー達が敵と距離をとる中、クルス・リンシーとムービングツリーの間に割って入ったエンネア・ゼロは風魔法ストームシールドを発動させる。

「ストームシールド」

ストームシールドは対象者の前方に風の力を持つ盾を作りだし物理魔法問わず、対象に放たれた射出系を一定時間無効化する。

 (見たことのない敵だ。ヘルハウンドは犬型で嗅覚が鋭く敵の発見に優れているのだが敵の存在に気づけなかった。私も採取に夢中になりすぎたし、ただの木と思っていた。反省しないとな。少し様子をみよう。)

 ストームシールドでムービングツリーの葉を飛ばす攻撃を防ぎつつ敵を観察、ムービングツリーは移動できないのか動く気配がない。

「動く気配がないな」

 「風魔法を操る魔法使いか、葉ではダメージを与えることができないな、それならこれはどうだ フンッ」

ムービングツリーの枝が数本伸びて上空へ

 (地面から音が聞こえてくる。)

 地面の中を何かが掘り進みエンネア・ゼロを真下から攻撃。音で接近を悟っていたエンネア・ゼロはとっさにかわす。

「枝を上空に向かわせたのは注意をそちらに向けるいわばおとりで、根による地面からの攻撃が本命か」(地中の根は目視できないだけに少しやっかいだな)

「フハハ この物理攻撃はストームシールドでは防げんぞ それそれそれ」

根っこの連続攻撃を走りながら華麗にかわす。

「いつまで、かわしきれるかな。ワシの根に捕まったが最後貴様のMPを吸い尽くしてくれるわ。若いおなごでないのが残念だがな」

「ふむMPを吸収する攻撃ということか、それならロウフライング(低空飛行)」

飛行魔法を使い低空飛行することで地面からわずかに距離を取る。

そしてストームシールドを前方に展開しながら低空飛行でムービングツリーの方に一気に急加速突撃、ムービングツリーの横を突っ切ると同時にストームシールドを解除、すれ違い様に呪文をささやく。

「ライトニング」

ムービングツリーの頭上から雷鳴が轟き、雷撃が直撃!!

ムービングツリーはバリバリバリッと派手な音を立て真っ二つに割れ燃え上がる。

「ギャー」後方からムービングツリーの絶叫が聞こえる。

(もしかしたら死の間際こう思ったかもしれないな。雷系魔法は木に落ちた雷が幹や枝を伝ってくることがあるため木の真下は危険な場所である。なぜわざわざ攻撃対象の真下に接近し、危険をおかしてライトニングを放ったのかと。)

「力を誇示したかったのさ」


 


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