第8話 こどもたち

閻魔屠の力を借りて、山の入り口まで戻った俺達は、呼吸を整え、作戦会議をしていた。


「あいつらどうやって倒す、黒桐。」


「…少しリスクがある方法だが、やってみる価値のある倒し方がある。お前には俺の能力全て教えたワケじゃない。作戦はこうだ____」


再び、鬼の棲みかに俺達はやってきた。


「では行くぞ。」


「ああ。」


そこには、赤鬼青鬼が待ち構えていた。


「やはり来たぞ、兄じゃ。」「ああ弟。」


「お前達、モノノケは何故逃げない?」


「わっしらは逃げた所で、お前達以上の狩人に追跡され討伐されるだろうし、それは意味の無いことだ。だとするなら子供達に降りかかる火の粉を払うのが優先事項だ、ニンゲン。御託はもういいな?」


「ああ、いつでもこい。」


臨戦体制に入り、異能を発動する俺と黒桐。相手も異能を発動した。


俺は黒桐に言われたことを思い出した。「お前のもう一人の人格に切り替える技は、一瞬しか持たないし、持続性が無い。短期決戦向き過ぎてリスクがデカイ。反動もあるだろう。奴等との戦いで一人が機能しなくなるだけで、一気に戦況は劣勢になる。だから自力で戦う。まず作戦はこうだ。お前が極力奴等二人を引き付けろ。その後俺が赤鬼の武器を破壊する。その後は____」


幻影剣を使い、分身を出してなんとか攻撃を捌く。「そろそろだな、オラァ!」黒桐が赤鬼の側面をとり、大包丁を破壊する。


「これでも喰らっとけ!」青鬼に大剣を投擲、パワーの劣る青鬼は大きく吹っ飛び、隙が出来た。


「パワーファイトだ!うおおおお!」


黒桐は赤鬼の腕を掴み、取っ組み合いになる。「今だ、焚!やれ!」「シッ!」先程の戦闘では通らなかった刀が、肉と骨を切り裂き、赤鬼は袈裟で一刀両断された。


「やるじゃねぇか、黒桐!」「言ったろ、俺の能力はあくまでも触れた相手や自分の強度の変化!柔らかくすることも出来る!後は青鬼だけだ!」


「あに...じゃ...」


「弟よ、よく戦ったな。お前は十分やった。後は俺の糧になれ。」


赤鬼の血肉を啜る青鬼。その瞬間、青鬼の妖力が莫大に上がり、腕がブレード状に変形してく。


「こいつはS級クラスだ!焚、今すぐもう一人の方に変われ!」


「ふむ、これはマズイな。儂も本気を出さねば。」音速の速度で、斬撃を放つ青鬼。それをいなす閻魔屠だが、ほぼ互角の戦いだ。


「奥義 七灯斬り。」七の縛りで、己を強化する閻魔屠。それでも食い下がらず、互角の斬り合いが続く。


「そこの若いの!強度を下げろ!」


「分かった!」


青鬼を羽交い締めにする黒桐。次の瞬間、青鬼のブレードが破壊された。


「これで仕舞いだ。」


横薙にツムカリを一閃、青鬼は大量の血を吹き出し倒れる。


「閻魔屠、よくやったな。お前が居なきゃ死んでた。黒桐、止め、刺すか?」


「いや、待て焚。子供達が来た。最後なんだ、話させてやれ。」


虫の息でなんとか口を開く青鬼。「おお、ちび達か。すまんな、おじさん達、勝てなかったよ。」


「いいの、鬼のおじさん。私たちを守るために戦ってくれただけで、十分。強くてやさしくて、大好きだったよ」


「ふっ、それは嬉しいなぁ。ぐあっ... 」青鬼はもう限界のようだ。「おい、そこの二人、頼みがある...」俺が答える。


「何だ。」


「わっしらの代わりに、このちび達を、悪い大人から救って欲しいんだ。この子らは、未來への希望だ。俺達はそんな希望を摘み取ろうとする大人が許せなかった。頼めるか...?」


「分かった。お前達は正直、人間と何一つ変わらない存在だった。次生まれ変わったら人間として生まれてこいよ。そしたら、一緒に子供たちを守ろうぜ。」


「ああ、それは良いかもなぁ...ぐっ...」青鬼は息を引き取った。


子供達は大声で泣きわめいた。焚も、命を取り合いの中から生まれた、奇妙な人とモノノケの友情に、涙を流していた。


「焚、俺達はこうやって悲劇を味わって、強くなってくのが人間だ。今は泣いていいと思うぜ。」


「ああ。」事前に救援を呼んでいた帝都本部の職員が現場に到着し、子供達を保護してく。


山には真っ赤な夕陽が登り、この残酷な世界を照らしていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る