第4話 師匠

静寂____ 大量の飢人の死体と、首長女の死体を横目に、ただそれが広がっていた。ある狩人はトラウマを植え付けられたことにより恐怖し、生きてたことに安堵する者も居た。


「本当、よくB級狩人だけで、Aランク相当のモノノケを倒せたよな。最初に遭遇したとき、帝都本部にA級以上の狩人を支援要請したのに全然来ねぇし、B級筆頭だった田中は死ぬし、焚は何故か炎が出て爺口調になってるし、ワケわかんねぇよもう。」


狩人がそんなことを話してる内に、帝都本部の輸送車がやって来た。「こちら、帝都本部怪異対策化です。要請に応じ、やって来ました」


それを見て不満げに怒る狩人。「おせぇんだよ!お前らが中々来ねぇから、仲間が大量に死んじまったし、その中には俺の友達の佐藤も居たんだぞ!これは相当な額を払って貰えねぇと困るよなぁ!?」


まるでヤクザ染みた口調で輸送車の運転手を恐喝する狩人。


それに怯えた様子で、輸送車の可愛らしい、まだ二十代にも満たない女の子は震えながら声を絞り出す。


「だ、だってしょうがないじゃないですかぁ...帝都本部と帝都七区まで数百キロはあるんですよぉ...」


それに答える狩人。「なら銭だよ、銭。俺達は傭兵なんだ、払うもんしっかり払って貰えねぇと、困るぜ。」


「そんなこと運転手の私に言われても...」狩人達と運転手が揉めてる間に、首長女の首を引きずって歩てくる焚。(閻魔屠憑依)


「まぁまぁ若いの。ここはこの殲滅戦に参加した者全員に、通常の二倍の報酬を支払うことで手打ちとしませんかな?勿論、死んだ者にも。」


それに答える運転手。「それぐらいなら出来ますけど...後、私の名前は有馬 姫理です。」


「では姫お嬢さん、それで手打ちじゃ。後、仲間達の死体を帝都本部まで輸送してくれんかの?一応、こっちも200人は死んでるのぉ。合同葬式ぐらいした方が良いと思うのじゃ。飢人の死体は儂が全部燃やしておく。」


「分かりました、死体回収車も要請します。」


「所でお嬢さん、その輸送車に乗っ取るただ者ではない気配は誰かの?」


「帝都本部直属のSSS級狩人ですよ。それがどうかしましたか?」


「儂は達人と死合うのが好きでの。一度剣を交えてみたいのじゃ。」それを聞いて動揺する桃。「焚さん、それは駄目ですよ...狩人同士の交戦は、契約書で禁じられてます。それはいくらなんでも...」


二人がそうこうしてる内に開く座席のドア。「まぁ、いいじゃないかい。アタシが見た感じ、そいつは相当な剣士だ。お互いに死にはしないよ、って何だい、焚じゃないかい。」


そう言って後部座席から出てきた黒いショートカットに眼帯の、グラマラスな美女。腰には三尺程の刀が備えられている。


「おお、そこの美女よ。儂は色々あってこの焚と契約して、一時的に体を借りてる者じゃ。名を閻魔屠という。所で、一度死合ってみないかの?」


「まあ、アタシは良いけど。所で何をしたら焚の身体を解放してくれる?」


「儂に一太刀浴びせられたら解放してやるわい。何、心臓を破壊されない限り儂の能力で再生出来る。心配無用じゃ。」


「ほう、そりゃ便利。後、アタシの名前はアドマだ。」


「ではアドマさん、いくぞ。」


居合の構えを取るアドマと、 八相の構えを取る閻魔屠。今戦いの火蓋が切って落とされた。


刹那、激しい剣撃の攻防が始まった。


八相の構えから、 雲耀とも言えるべきスピードで連撃を放つ閻魔屠。


それを全て居合の構えからいなすアドマ。


「見た感じ、あんたの流派は示現流か。中々の速さだ。」


「ほっほっ、この程度では通じんか。なら、これならどうじゃ?」


上空に飛び上がる閻魔屠。


そこから建物の壁を蹴って、加速、加速の連続。流星のような速さでアドマに刀が迫る。そして一閃。


アドマは一度の斬撃で、居合から複数の斬撃を放ち、弾いた。閻魔屠は驚きの表情。「ほお、次元湾曲剣技か。面白い!」と言い放ち、八相の構えから、首長女に繰り出した、光速の斬撃をアドマに放った。


次の瞬間、アドマの刀は砕け、胴体に刀がめり込み、倒れる。決着はついた。かのように見えた。


なんと、閻魔屠の背後に斬られた筈のアドマが現れた。


「奥義 幻影剣。見事に騙されたね。」閻魔屠は反応したが、それも間に合わず、峰打ちを食らって倒れた。


「勝負ありだね。さあ焚、家に帰るよ。姫ちゃん、車を出してくれ。」


焚とツムカリを担いで、車に乗せるアドマ。焚達の長い1日は、ようやく幕を閉じた。


自宅で目を覚ます焚。「ここは...自宅か?確かモノノケに首を飛ばされた後、変な爺様と話して、それで...って師匠!なんでここに居るの!?」「おっ、ようやく目を覚ましたか、焚。帝都本部に要請が来たからここまで来たぜ。まぁ、メインはお前に会う為だったんだけど。」「お久しぶりです、師匠。あんたは俺が14の時、五年前に置き手紙を残して俺の前から消えた。一体何があったんですか?」「ああ、海外遠征に言ってた。海の向こうで強力なモノノケが発生してな、そいつらを倒しに行ってた。」「そうだったんですか、お疲れ様です。もう、俺から離れないで下さいね。」「分かってるよ、お前は本当にアタシが好きだよな。」照れた顔を背ける焚。「所で、何でウチに来たんですか?」「それはだな、お前に昇格任務を渡す為だ。」

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