第3話 焔

飢人を8割殲滅した焚一行。首長女は飢人の群れの奥に居た。


狩人達は焦燥と疲労で限界まで達していた。


「ハアハア、なんとか大半の飢人を殲滅したが、俺達の弾薬と体力はもう持たねぇ。本丸はあの首長女だ。焚、田中、雑魚は俺達が掃除して、道を開く。援護するから突っ込みな!」


焚と田中は呼応して、首長女の所まで走る。「焚、まだやれるな?」「応!いけるぜ田中さん!この刀を手に入れてからコンディションは常に万全だ。追い込みを掛ける!お前ら、弾幕は頼んだ!」


それに答えるように、狩人達は機関銃を撃ちまくる。「うおおおおおお!」巨大な獲物で飢人を斬りまくる田中と焚。「おらぁ!」「シッ!」それを見ながら首長女は呟いた。


「縺サ縺??√∪縺輔°縺薙%縺セ縺ァ鬟溘>荳九′繧九→縺ッ諠ウ螳壼、悶〒縺吶?る」「莠コ縺ョ鄒、繧後〒繧りカウ豁「繧∫ィ句コヲ縺ォ縺励°縺ェ繧翫∪縺帙s縺九?ゅ◎繧阪◎繧咲ァ√?譛ャ豌励r隕九○縺セ縺励g縺??」


警戒する田中と焚。


「おい、焚、首長女の様子が変だぞ。」


「田中さん、これは気を付けた方がいいっすね。」めきめきと体を反らせる首長女。


その時、二十本近くの刃の付いた触手が背中から生えた。


焚が呟く。「この前倒したモノノケより多いな。田中さん、来るぞ!」


臨戦態勢になった首長女。刹那、無数の斬撃が二人を襲った。斬撃の嵐を、経験と技術で受け流す田中と焚。「畜生、なんて速さだ!」「喋るより体を動かせ焚!気を抜いたら死ぬぞ!うおおおおお!」


それを遠方から眺める狩人。「なんて戦いだよ、あれを捌けるあいつらも人間じゃねぇ」斬撃の嵐を捌く二人。最中、反撃の線が見えた。


即座に反応する田中。「獲った!」その瞬間、首長女は跳躍、大口を開けて田中の頭部に噛みついた。「やべっ__」


反応をした時にはもう遅く、田中は頭部の無い屍と化した。仲間が死んで激昂する焚。「田中さん!てめぇ、よくも!」だがそれが仇となり、隙が生じた。触手の刃で首を飛ばされた焚。


首長女が呟く。 「縺薙?蜍晁イ?縲∝享縺。縺セ縺励◆縺ュ」それに狩人達はおののく。「やべぇ、焚と田中が死んだ!お前ら、撤退し___え?」次の瞬間、狩人の首が飛び、死体は斬撃の嵐でばらばらになった。


「うわあああああ!」狂乱状態で機関銃を乱射する狩人。だが、その抵抗も虚しく、次々と触手の餌食になっていく。


血のように赤く染まった海岸で目を覚ます焚。「ここは...?死んだのか、俺は...?」


辺りを見回す焚。


視界に焚き火で暖まる老人が映る。


その老人は、ただ一つ形容が出来るとしたら、ただただ巨大であった。


立ち上がり、3mは下らない異形を動かし、こちらに歩いてくる。その手には、何故かツムカリが握られている。


「ようやく目を覚ましたか、坊主。」「あんた誰だ?」


「儂は、お前が使ってたツムカリの所有者だ。ここは生者でも、死者でもない、狭間の者が住まうこの世とあの世の境界。まあ、早い話、お前の心の中だ。」


「俺は死んだんじゃないのか?」


「まあ死んだな。だが心臓や他の臓器は生きておる。儂の力を使えば復活は可能だ。」


それに驚愕した顔で、こいつは胡散臭いと思いながら口が滑る焚。


「そんなことが出来るのか?」


「ああ、可能だ。ツムカリに宿る儂と、契約したらな。ただし、条件がある。お前がモノノケと戦闘する際に、五分間だけ儂に体を貸してくれればいい。儂はとにかく、命の取り合いが好きでな。生前はお前のように、修羅の道を進んで、常に死線と共にあった。だが老衰で剣を極める前に死んでな。剣聖と呼ばれる一歩手前だった。儂は、その夢を叶えて剣聖を越えた"剣神"と呼ばれる存在になりたいのだよ。」


「なるほどね。あんた、相当血に飢えてるな。でも俺はもう生きるのなんてごめんだ。いつ死ぬかも分からないギリギリの状況で呼吸をしながら、毎日モノノケ退治に赴く。そしてその繰り返し。狩人としての格も上がらず、だからモノノケや飢人の居ない、安全な帝都にも住めない。そんな世界に嫌気が差していたし、俺の人生は昔から最悪だった。だから蘇生なんてしたくない。」


「お前の記憶を少し覗かせて貰った。まあ、最悪だわな。でも、もう少し生きてみたら希望が見えてくるかもしれないぞ?」「嫌だね。」「師匠にまた再会出来るとしたら?」「...!」「ほう、少しは生きてみる気があるようだな。」


「ああ、あの人は俺にとっての親みたいな存在だ。俺がスラムでゴミを漁って生きてた頃に出会った。太陽みたいに俺のようなクズにも暖かく優しい、そして時には冷ややかで冷静にモノノケを殺す。だが、常に命に敬意を払い、葬送の心得は忘れない。この腐った世界にやってきた聖者のような姿に俺は憧れていた。そうだな、彼女にもう一度会えるなら、生きてみるのもありか。」


「なら、手を貸せ。」


「ところで、あんた名は?」


「閻魔屠___ヤマトだ。」「俺は七灯焚。」「儂の手に触れ、共に詠唱しろ。」


「ああ。」「「我はこの世の虚実、邪悪を焼き尽くす焔、名を____」」


「「残火よ、不浄を焼き尽くせ《ツァラトゥストラ》」」




突如として、焔が渦巻き、焚の死体を包む。驚く狩人。焔が首を覆い、形成される焚の頭部。


「「久しぶりの肉体だ。体に馴染むな。ふむ、敵はあやつか。」」どうやらヤマトが焚に憑依したようだ。叫ぶ狩人。「焚!なんだその炎!?」


「「まあ見ておれ、若いの。」」


その瞬間、焚は空中に跳躍、建物を蹴って己を加速させ、飢人の群れを斬り裂く。次の瞬間、五百体程の飢人が、炎を纏ったツムカリで灰になった。絶叫し、触手を振り回す首長女。居合いの構えを取る焚。一閃。極致に至った剣技はただそう呼ぶに相応しかった。


一瞬で首長女の触手は消えた。「「ほれ、仕舞いじゃ」」光速の袈裟斬りで、触手女の首は断たれ、血の饗宴は幕を閉じた。

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