第9話 悪夢
俺はくたくたになった体で、家に帰ってきた。TVを付けて、ニュースを見る。「本日のニュースです。今日の5時程に、二体のモノノケに連れ去られた子供達が、帝都本部に保護されました。以下、街頭インタビューです。」
「子供達が戻ってきて本当に良かったわぁ~ 親と子供の絆を引き裂くモノノケは死んで当然ね。今頃地獄行きだわ!」
俺は体の内から、守るべきこの民間人に対して、どす黒い気持ちが沸き上がってくるのを感じた。お前は何も知らないだろう、子供達は親から虐待を受けていて、鬼達はその子達を守っていたんだ。でも、俺は師匠と一緒に暮らす為には、任務に殉じて、殺すしか無かった。今更正義ぶっても遅い。俺だって共犯者なんだ。そう思った次の瞬間、耳に声が入った。
「そうだよ、お前は人間同然の罪の無いモノノケを、自分の浅ましい欲望を満たす為に殺したんだ。何が狩人の誇りだ、そこにあるのは孤独になるのが嫌だという子供のわがままじゃないか。お前はこれから良心の呵責で苦しみ続ける運命だ。残念ながら、そこに救いなんてない。」
俺をなじる幻聴だ。何故急に?俺は荒い呼吸をしながら、必死にその声を振り払おうとする。「お前の本質は結局、ママの乳房が欲しいだけのあまちゃん坊やなんだよ。それでいて敵対者には冷酷で残忍。まったく、最悪のガキだよ!地獄に堕ちるのは確実だね!」
「黙れぇぇぇ!」俺は叫びながら、ツムカリを振り回した。テレビや家具が刀に当たって、壊れてゆく。声は消えた。俺は憔悴した状態のまま、睡眠薬を50錠程飲んで、眠りに就いた。
「ごめんよう、ごめんよう、〇〇〇」夢の中で、誰かが必死に謝っている。これは俺か?顔は似てるが灰色の髪に、片目が髪で隠れてる少年だ。誰だ、これは。「お前が死ぬべきだったんだよ、〇〇!」今度は父と思われし人物に暴言を吐かれている。少年が泣いている。
「〇〇くんは何も悪くないよ。私が君を苦しめる全てから必ず守る。だから泣かないで。」
今度は桃色の髪の女の子と一緒に居る。誰なんだ、こいつは?そう疑問に思いながら、俺は意識を失った。
気付いたら朝になっていた。相変わらず空は真っ赤。
もう見慣れたが、気味が悪い。
今日は師匠や黒桐と帝都に向かう日だ。パンを口に加えながら、最低限の装備で外へ向かう。黒桐とアドマ師匠が居た。俺は昨日の散々な目に会ったことを話そうと思ったのだが、二人に会えて何故か安心感を得たので、口をつぐむことにした。
「焚、遅いぞ。何度も連絡したのに、既読すら付きやしない。」
ケータイを見たら、めちゃくちゃメッセージが来ていた。「すいません、遅れて。」
「すまんで済んだら警察は要らんぞ!」
「まぁまぁアドマさん、無事会えたんだから良いじゃないですか。ほら、車に乗れ。」
黒桐が宥め、運転席に座る。「黒桐、運転免許なんて持ってたんだな。」
「チビ達を学校に送るのに必要でよ。では、行くぞ。」
「応。」
三人は車に乗って、帝都に向かった。
三時間程経った。俺はケータイで暇潰すのにも飽きて、ドライブに飽き飽きしていた。「黒桐~まだかよ~」
「後もうちょいで検問所だ。」
車が守衛の前で止まる。
「ケータイから狩人免許を見せて下さい」
三人が免許を見せる。「SSS級狩人1名、A級狩人二名。通ります。」
車はトンネルに入った。「ずいぶん明るいな。何の光っすか、アドマ師匠。」
「それは視てからのお楽しみ。」
三人はトンネルを抜けた。なんと、頭上には煌々と輝く球体があった。しかも空は蒼い。どうなってんだ?
「師匠、これはいったい!?」「人工太陽と、ホログラムパネルで世界が異界に包まれる前の世界を再現したものさ。最高だろ。」
「はい!」
「はは、焚、子供みたいだぞ。」
「...!」
黒桐が居ることを忘れてついはしゃいでしまった。俺は顔を赤くして、下を向いた。遂に帝都で黒桐や師匠と暮らせると思うと、ワクワクが止まらなかった。
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