第18話 戦闘開始

夢を見ていた。眼帯の女性が、自分を苛む悪夢の中で、悪鬼を駆逐してく。最後に悪夢は晴れ、花園が広がる野原で抱き締められ目が覚める。


「俺は...何を...?」


「やっと目覚めたかい、お姫様。」


「師匠!ここは一体...?」


「帝都ビルの医務室だ。蓮も、姫理ちゃんも心配してたんだぞ。」


「蓮さん、姫理さん、ご心配をお掛けしました。妖術として心象風景を具現化させるモノノケ、九尾妖狐の術中にまんまと嵌ってしまって。」


俺がそう謝ると、蓮さんと姫理さんは頷いて、「私が推測する限りだが、君は多くのトラウマを抱えながらも、それでも決死の思いで戦火に身を置く人間だ。普段は安定していても、何らかのきっかけで崩壊するメンタルの脆弱性がある。だが克服した時、君はアドマや海斗と並ぶ狩人になるだろうね。その時になったら、モノノケを殺す者としての更に上の段階を教えよう。」


「今回、君が九尾妖狐の領域構築によって攫われた後、帝都の入り口や、各拠点を百鬼夜行の面々に占拠された。不幸中の幸いだが、今回帝都のS級以上の狩人は皆ここに招集出来た。本部の入り口を拠点とし、皆をそこで待機させている。ブリーフィングをそこで始めるので、全員私と来てくれ。」


__________


「揃ったな。では、今回の作戦の会議をこれより始める。」


「百鬼夜行の面々は現在、帝都のAブロック、Bブロック、Cブロック、Dブロック、Eブロックを占拠している。ぬらりひょんの姿は今の段階では見えない。そして奴等の目的は、帝都の各ブロックに存在する要石を破壊することにより、モノノケ達の住まう世界、妖界とこちらの異界を繋げることが目的だ。」


「だが、要石には古代に居たとされる狩人が特殊な細工をしており、私が所有する五元素のリングが無ければ、要石の結界は破壊出来ない。故に、彼等は狩人を迎撃する為に各拠点で待ち構えている。このまま膠着していれば、無辜の人命が奪われるだけだ。」


「そして厄介なことに、彼等は五元素のリングを所持して居なければ入れない結界を、要石の結界の上に重ねて待機している。恐らく九尾妖狐の術だろう。故に失敗は絶対に許されない決死の作戦になるだろう。」


「そしてこちらの作戦はこうだ。5つのリングを所有した5人の狩人が、各拠点に赴き、五大幹部を全て倒した後、私とアドマを加えてぬらりひょんを総力で叩く。」


「まず五大幹部の居る拠点とそこに向かう狩人を教える。」


「まずA拠点。ここには動きが素早く、飛行能力を持った鞍馬天狗がいる。ここはS級狩人の九郎義経が最適だろう。九郎、軽く自己紹介を。」


「うっす!どうもー、皆さん!帝都の道化狩人、九郎義経です!特技は狙撃と小太刀二刀流、趣味はプラモ作りでっす!焚くんと黒桐くんは初めましてだね?まあ、仲良くやろう!」


「九郎は色々とはっちゃけた奴だが、仕事は確実にこなす人材だ。私からも宜しく頼む。」


「どうも、九郎さん。俺は七灯焚です。武器は大太刀、使う異能は炎です。宜しく。」


「初めまして、九郎さん。俺は三国黒桐。武器は大剣、使う異能は触れた物体の強度を自由に変える能力です。宜しくお願いします。」


「よろぴくねー!ほんじゃ、蓮さん、続きを頼みますよ!」


「ああ。Bブロックには、九尾妖狐が待ち構えている。ここは有馬姫理が適材だな。」


「「えっ!?」」


「ああ、言って無かったか。姫理はこう見えて、海斗と同じ、SS級狩人だ。まだ若いが、強力な異能を持ってるよ。姫理、挨拶を。」


「はい、では改めて。有馬姫理です。武器は無いですが、異能は多岐に渡る超能力。幻術にも適応力があるので、九尾妖狐には適してます!皆、頑張ろうね!」


「「はい!」」


「はは、黒桐と焚にとっては勝利の女神のように映るかもな。」


「アドマさん、言い過ぎですよ...プレッシャー掛かっちゃいます...」


頬を赤らめる姫理。あまり褒められ慣れていないようだ。


「では続ける。Cブロックは酒呑童子。ここは魔性を斬り慣れた閻魔屠さんが宿ってる、焚くんに行ってもらおう。」


「蓮さん、何故閻魔屠の名を?」


「気になって、先程調べたら文献があった。古代にて大地の王ジャムシードの裏切りに遭った、伝説的な退魔の剣士ザッハークだとね。だが、私の見立てでは、二人は"入れ替わった末に何かがあった"恐らくは、後世の人間にとって都合の悪い何かがあり、真実と名前や象徴が捻じ曲げられたと私は捉えてる。これを君が如何に解釈するかは自由だが。」


その言葉を聞いた瞬間、何故か頭に激しい頭痛か走った。


「おっと、余計な事を言ってしまったね。では続けよう。Dブロックは両面宿儺がいる。このモノノケは、金剛石のような筋肉を身に纏ってる為、三国黒桐くんが最適だろう。」


「はい、必ず成功させる為に、善処します。」


「Eブロックは大嶽丸。ここは、彼との因縁がある鈴鹿海斗で。上手くそれを使ってくれ。」


「了解だ、蓮ちゃん!」


「では、これより百鬼夜行迎撃作戦を開始する!総員、戦闘開始!」


激しい戦いの火蓋が、切って落とされた。

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