第12話 初夜
鈴鹿海斗と名乗る男の登場に、俺と黒桐は呆気に取られていたが、黒桐はすぐ順応したようで、挨拶に名乗り出た。
「どうも、鈴鹿さん。俺は三国黒桐、A級狩人です。異能は触れた物の強度を変化出来る能力です。武器は大剣、歳は26。こっちの野太刀を背負った青年は、七灯焚。異能は不浄を焼き尽くす炎と、再生能力。同じくA級狩人です。」
「鈴鹿さん、宜しくお願いします。年齢は19です。」
「二人共、若いな。俺は31だが、タメ口でイイし、呼び方は海斗でいいぜメーン。上下関係、そんなうるせぇ、関係嫌ぇ、そして俺はいつも調子ok♪」
ファーストコンタクトはぶっ飛んだ人のように見えたが、気さくでフランクかつ寛容に見える人だ。そして、その鍛えぬかれた肉体と、それに伴う古傷は、彼の長年の経験と死線を潜り抜けた戦歴を感じさせる。
「海斗はぶっ飛んだやつだが、実力とそれに見合った人間性は確かなものだ。二人にとって良い先輩になると、私は思うよ。そんで、蓮ちゃん。今日はもう遅い。本部の宿泊室に皆で泊まって、対策と訓練は明日にしよう。」
「私も賛成だ。では、皆、長旅ご苦労。各自休憩室でゆっくり休んでくれたまえ。」
「「ウス!」」
50階に集まった面々は、引き締まった顔つきで、明日を迎える為にそれぞれの部屋へ向かって行った。
「焚様は401号室、黒桐様は402号室、海斗様は403号室、アドマ様は404号室となります。」
「嬢ちゃんありがとうだぜイェー!あんたもゆっくり休んでくれだぜメーン!」
「海斗様、ありがとうございます。では皆様、おやすみなさいませ。」
俺は自室に向かい、シャワーを浴びて、睡眠薬を5錠ほど飲み、音楽を聴きながら意識は闇に落ちた。
また夢だ。砂漠に囲まれた城内で肌が黒く、王冠を被った髭もじゃの壮年の男に頭を撫でられている。「〇〇〇、私はもうじき死ぬ。お前は私があのジャムシードに討ち取られた後は、彼の養子となり、彼に仕えよ。もう対立とこの国の滅亡は避けられぬ。国よりも、妻が残してくれたお前と国民の命の方が大事なんだ。国は滅びれど、民草は一人一人がかけがえのないものであり、それが潰えてしまえば、国は成り立たない。民草無くして国家は成り立たぬ。どうか、幸せな人生を送ってくれ。」
「分かりました、お父様。でも、ジャムシードおじちゃんとお父様の仲直りはもう出来ないの?」
「私は彼から、大切なものを奪った。その報いを受けるには当然のことをしたんだよ。でも、私は彼を恨まない。〇〇〇も、ジャムシードおじちゃんを恨まないでいるんだよ。いいかい?」
壮年の王は俺らしき幼い子供に言い聞かせるように語った。
「うん!」
場面が変わり、ジャムシードらしき王が、壮年の男性の首を掲げて叫んでる姿が見えた。
「〇〇〇〇〇王朝の長子、〇〇〇よ!貴公の王は私によって討ち取られた!これから貴公は私の養子となれ!さすればこれ以上、民達の無駄な命は奪わない!降伏せよ!」
俺らしき子供は、涙を流しながら、血走った目でジャムシード王を憎んでいた。壮年の王の虚ろな目が、真っ黒に変わり、その瞬間叫び声を上げ、目が覚めた。汗がびっしょりだった。そして何故か、涙が目から止まらなかった。これは俺の過去世の映像だろうか?
トイレでのフラッシュバックも相まって、今日の俺は最悪だ。誰かに抱き締められられたくて仕方がなかった。そして、気づけば、アドマ師匠の部屋の扉の前に居た。
「アドマ師匠、入っても大丈夫ですか?」
「ああ、入りな。」
「師匠、もう俺、死にたいです。自分でも、どうしたら良いのか分からなくて。そして、自分自身が、救いようのない怪物になっていくのがはっきり分かる。」
次の瞬間、ベッドの目の前に立ってた俺を師匠はそっと抱き寄せた。温かい。初めて、師匠と逢ったときの感触だ。こうやって俺の顔を胸にうずめさせて、落ち着かせてくれたっけ。
「大丈夫だよ、焚。怖かったね。今夜は私と寝て、悪い夢は全て忘れな。」
「はい。」
お互いがベッドの上へ乗っかり、衣服を脱ぎ始めた。師匠の熟れた、豊満な肉体があらわになる。お腹には帝王切開の後がある。
「来な、焚。」
「師匠...んっ...」
無理矢理唇を奪われた。そのままなし崩し的に、俺の肉体を師匠が抱き締める。はじめて触る、師匠の一糸纏わぬからだ。俺の男としての本能に火が着いた。乱暴に、師匠の胸を揉みしだき、貪るようにキスする。
「肉体は嘘を付かないな、焚。お前の始めてが、こんな30近くのババアですまないな。」師匠が淫靡な表情で微笑む。とても色っぽい。
「ゴムはこれしかなくてな。」
「挿入れます、師匠」
「ああ。」
師匠の貝に、俺の剣が入る。対面座位の姿勢で、師匠がゆっくり動く。
「師匠っ...師匠っ...」
泣きながら快楽に浸る焚。
「出ます...っ!」
「お前の苦しみ、全て私に流し込め。いつでも私とお前は一つだ。」
「うっ...!」
命の源を、ゴム越しに師匠の中に出した。
「スッキリしたか。」
「はい、嫌な気持ち、全部吹っ飛びました。」
「良かった。最近のお前、あまりにも辛そうで、視てられなかった。師匠ではなく、一人の女として出来ることはこれぐらいだ。」
ゴムを捨て、濡れた一物をティッシュで拭き、座りながら煙草に火を着けた。
「焚、一本いいか?」
「はい、師匠。」
お互いに煙草を咥え、火種を師匠の煙草に分ける。
「シガーキスってやつだな。旦那とよくやったよ。」
「師匠には旦那さんが居たんですか?」
「ああ。子供も居た。だが、その子供はあるモノノケに殺された。それがぬらりひょんだ。今回の戦いは、私にとって弔い合戦でもある。でも不思議だな、焚。お前のことは、息子だとも思ってるし、若い旦那のようにも思っている。私も結局、寂しいのかなって。」
「...!嬉しい御言葉、ありがとうございます。でも、俺は師匠と結ばれるなら、悪くないと思います。」
「嬉しいねぇ、焚。そうだ、これをお前に預ける。」
丸十字のシルバーのネックレスだ。
「これは旦那の形見。彼はモノノケであろうと、不殺の信念を持ってて、これはその象徴だった。お前はなんだか、旦那に似てる。だから放っておけないし、これを渡した。」
「こんな大事なものを貰えるなんて...ありがとうございます。」
「今日はこのまま私の部屋に泊まってきな。ヤった後は、よく休め。」
「はい...」
俺はそのまま意識を失った。悪夢は見ず、よく眠れた。人工太陽が、俺達を明るく照らしていた。
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