星に願いを (花金企画 お題天体観測に寄せて)
古い
その花は下が細くて、上に行くとまあるい一つながりの花弁が四方に広がっている形のようだ。
遥か彼方の
なぜその花の名前を覚えているかですって?
それは目の前にある
見たことも無い花を思い描きながら、情報回収機の拾う音に意識を集中していると、微かだけれど小さな男の子の声が聞こえてきた。
『……お星様……ママの病気……く良くなりますよう……ねがいしま……』
どこの星から聞こえてきたんだろう?
この子のお母さん、病気なのね。早く治って欲しくてお祈りしているんだわ。
私は素早く、声の発信源を突き止める。
「これはティターニア星からのようね」
マイクで配達員に連絡を入れた。
「あー、誰かティターニア星の近くにいる配達員いない?」
「おお、ジェシカ! 今日も綺麗だよ」
「その声はアシュガね。顔なんか見えないくせによく言うわよ」
「見えているよ。俺の心の中にはね」
「もう、冗談言ってないで、早く薬を届けてあげて頂戴」
「了解! その代わり帰ったらデートしてくれよ」
「……お、覚えていたらね」
アシュガはそう言うと、笑いながら宇宙船の速度を速めた。
ジェシカが働いているところは、ポルックス星の近くにある、地球からは暗くて見えないホスピタール星。
ここの小さな薬屋さんに勤めている。
全宇宙から届く願いになるべく早く答えられるように、常に情報収集は欠かせないのだ。
宇宙には沢山の星があり、たくさんの生き物がいて、時々薬が必要になる。
ジェシカが働くホスピタール星の薬屋さんには、色々な病気によく効く万能薬が保管されていた。
それは星の中央に聳え立つ生命の樹からできる薬。
今日もその薬を願う少年の声に応えることができたのだった。
☆
「ユウト。寒いからもう閉めて寝ようか」
「うん、パパ」
ティターニア星の住宅街の一角、二階の窓から夜空を見上げる親子の姿があった。
ママは病気で入院中。
だからパパと二人だけで双子座流星群を眺めていたのだった。
「ふたござりゅうせいぐんって言うんでしょ。僕にもいっぱい流れ星が見えたよ」
「そうか! 良かったな」
「……」
「どうした?」
ユウトパパは、ユウトの頭を撫でながら顔を覗き込む。
「ママの病気、これで治るよね」
「そうだね」
「僕、流れ星が消える前にちゃんと三回言えたよ! ママの病気が早く良くなりますようにって」
「ありがとうな。ユウトのお陰で、ママはきっとアッと言う間に良くなるよ」
「うん」
ユウトのママが元気になって、お家に帰ってきたのはその二週間後のこと。
ユウトの願いが届いて、アシュガがちゃんとお薬を届けてくれたから。
流れ星が消える前に三回願い事を言うのは難しいけれど、とりあえず声に出してみて!
きっと今夜も、ジェシカ達が耳を傾けているはずだから。
完
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