ラブラブ (花金企画 お題記憶に寄せて)

 中学二年生の眞城未来ましろみくの目下の悩みは、反抗期なのに反抗し辛い両親のこと。

 

 四十を超えても姉妹に見える美人な母、奈々子ななこ

 穏やかで細マッチョな父、隼人はやと


 二人共自慢の両親だから、反抗期なのに反抗したくなるような事態が発生してこないのだ。


 それでも、一つだけ、やめて欲しいと思っていることがある。


 それは……



 日曜日の午後、居間のソファに座ってテレビを見ながら、未来みくはアイスを食べていた。


「あら、未来みくちゃん、いい物食べてるわねーそれ何味?」

「ママが買って置いてくれた苺ミルク味だよ」

「ああ、そうだったわ。本当はキャラメル味も買ったんだけど、ママ我慢ができなくなって食べちゃったの。ごめんね」

「別に。苺味も好きだから大丈夫だよ」

「アイスと言えばー」


 未来みくはほら始まったと、少しだけうんざりする。

「まだパパと付き合い始めたばかりの頃のことなんだけどね~」


 話し始めてウフフっと嬉しそうに笑った。

 これはいつもの事だ。 

 またが始まったと、未来みくは心の中でカックリする。


「コンビニにアイス買いに行ったパパが全然帰ってこなくて、すっごい心配したことがあったわ~」

「ふーん。そうなんだ」

「何していたと思う?」

「さあ」

「パパったらね~」


 そこでまたウフフっと笑う。

 奈々子の話はだいたい、ウフフが十回くらい入らないと終わらないことが多いから、未来みくはアイスを食べることにだけ気持ちを集中させることにした。


「側溝に嵌った子猫ちゃん、助けていたんだって! ね、パパって優しいでしょ」


 自慢げにそう言った母親の顔を、未来みくは苦笑気味に見つめた。 


 今もパパに絶賛大恋愛中なママは、ことある事にパパの自慢話をしてくる。


 手を変え品を変え、色々な話をされるけど、流石にこの歳まで聞かされてきたら、だいたいのイベント事は語り済みであり、若くて記憶力の良い未来みくは覚えてしまっている。だから、母親が微妙に間違って話すことも指摘できるくらい覚えてしまっているのだが、面倒くさいから指摘したことは無い。


 そんなことしなくても、頃合い良くやって来るからだ。

 ニコニコ嬉しそうな父親が。


「それはちょっとだけ違うよ。ママ。子猫ちゃんじゃなくて、子犬だよ」

「あらやだー私ったら。間違えちゃった」

「あの時のママ、泣きながら飛びついてきてくれて可愛かったな」

「もう、パパったら。プンプンって怒りながらの間違いじゃな~い。だって、パパが遅くて心配で心配で気が狂いそうになっていたんだもの」

「悪かったね。心配させて」

「いいのーだってパパ、あの後溶けちゃったアイスの代わりに、温かーいココア入れてくれたもの」

「あれ? コーヒーだったよね」

「そうだったっけ? まあ何でもいいわ。とっても美味しかったことには変わりないもの」

「そうだな」


 そうして二人でニッコリ見つめ合った後、未来みくに瞳を戻してくるのだ。 

 優しい二人に見つめられて、未来みくもニッコリ笑顔を返した。

 

 未来みくからしてみれば、二人共微妙に記憶が曖昧で、互いに指摘しあいながらも、どちらも正しくないことが多いのだが、まあそんな細かい事はどうでも良いのかなと思う。

 

 二人が仲良ければ、それで幸せなのだから。


 でも、外では控えて欲しいのよね。

 私のほうが見ていて恥ずかしいんだからね。


    おしまい!



☆他の『花金』参加作者様の作品はこちらからお楽しみください

 ↓ 

https://kakuyomu.jp/works/16816452219018347348/episodes/16816452221023465087





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