無限教授『恋』を知る (花金企画 お題無知に寄せて)
「
ここ、
ボサボサの寝癖だらけの髪、無精ひげ、研究に没頭してしまうと研究室で寝泊まりしてしまい、寝食すら危うくなる
それでもみんなに学問の面白さを伝えたいと言う情熱は持っているので、講義の時間だけはちゃんと遅刻せずに行く。
そんな『恋』と無縁そうな
要は何でも数値化できれば良いだけなのだが……
助手の
「で、脳波や心電図の波形を使おうと言うわけだね。まあ、やってみる価値はあるだろう」
「やったー! じゃあ、教授、実験台になってください」
「私は無理だな。そもそも『恋』がわからない」
「だから、『恋』を知らない人の脳波と心電図が必要なんですよ。比べるサンプルが無いとだめじゃないですか!」
「確かに。よしやってみよう」
ふふふ、これで準備完了!
今日こそ教授に『恋』を知ってもらうのだ!
当たり障りの無い会話をしながら、普段の
「なかなか面白いな」
数字にしか興味の無い
「うん? 今度は
「はい。『推し』の写真を見る私に、どんな脳波、心電図の波形が現れるか調べます」
「なるほど。推しを見る=恋と言うわけか。と言うことは君の恋の相手は『推し』と言うことになるのだな」
「いえ、そう言う事では無いのですが……推しは生身のターゲットの代わりです」
「おお、生身のターゲットがいるけれど、ここに呼べないから『推し』で代用すると言うことか。よし、本物には勝てないだろうが、まあ近い数値は出てくるだろうね」
実は『推し』の写真を見ているように見せかけて、ちらちらと
装置の波形は、明らかに先ほどとは違う波形を示す。
正確に言えば、波の動きが大きくなったり、急激になったり……
「おお! ちゃんと違う波形になったぞ。これは面白い!」
「はい。やっぱり『恋』の波形は通常と違います。つまり『恋』が叩きだす数値は通常と違う数値と言うことがわかりますよね」
「
「なぜ?」
「それは……いつもとは違う状況でどんな波形が生まれるか見ていただくためです」
「なるほど」
のだが……なぜか
近い近い近い!
これがいつもと違う状況なのは確かなのだが、それにしても近すぎないか?
「お、おい、
「ええ、でもいつもと違う状況をつくるわけですから、これくらい近づかないといつもと変わらないじゃないですか!」
「いや、でも……」
ぐいぐい迫ってくる
そのうち妙なドキドキが始まった。
なんだ、この早鐘のような胸の音は。
俺にとって興味があるのは、数字だけだ。
美しい数字と計算式!
それだけが俺のエクスタシーを刺激するもの!
だが……今感じるこの高揚感はなんだ?
体を電流のようなものが突き抜けた。
「教授!
「素晴らしいデータが取れましたよ」
「へ? そ、そうか」
最初の普段の波形に比べてと言う条件付きだが。
「こ、これは……いつもと違う状況と『恋』の波形は似ていると言うことだな」
「そうなりますね。つまり、教授は今ご自身の『恋』の波形を計測したと言ってもいいのではないかと思います」
「相関係数が限りなく一に近いと言いたいんだな。まだまだサンプル検証は必要だが、仮定して証明を始めるのは悪く無い。そうなるとこの波形は私の『恋』の数値と言うことか」
「はい」
「うん? 『恋』の数値は『ターゲットを見る=恋』から導きだされた数値だったよな。つまり俺のターゲットは……」
「……ダメ……ですか……」
恥じらうような上目遣いを見て、
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